解説者やタレント、指導者など、スポーツ関連の職または企業に従事する。そんなイメージを抱いている人も多いだろう。
しかし現在、元アスリートたちが活躍する舞台は多岐に渡る。
Bリーガー伊藤良太氏も、知的障がいのある作家のアートを用いたプロジェクトやコラボ事業で注目を浴びている福祉ベンチャー「ヘラルボニー」の人事担当という、非常にユニークなセカンドキャリアをスタートさせた一人だ。
職業が変わっただけで、目指すものは変わっていない
──まず、2022年6月にプロバスケットボール選手を引退され、セカンドキャリアがスタートしたということでよろしいでしょうか。そうなんですけど、セカンドキャリアと言っていいのか......。
僕はプロ選手になる前に社会人経験があるんですよ。東京海上日動火災保険に就職して、3年間、東京で法人営業を担当しながら実業団でバスケットボールをやっていました。
岐阜県に転勤したときに岐阜スゥープスのトライアウトを受けて、日中は東京海上で営業、夜はプロチームのアマチュア選手として練習、土日は試合というサイクルで生活をしていました。
──どのタイミングでプロ選手になったのですか?
岩手ビッグブルズに移籍するタイミングで会社を退職して、プロ選手になりました。その後3年間、キャプテンとしてキャリアを重ね、22年7月1日から、ヘラルボニーの人事担当としてジョインをしています。
──Bリーガーから福祉企業に、しかも人事担当への転身はかなり異色だと思うのですが、2つの職業に共通点はあるのでしょうか?
人事担当として、誰もが力を最大限に発揮できるようなチームビルディングを行うという点では、これまでの経験が活かせると思っています。
ヘラルボニーの仲間たちって、ヘラルボニーのビジョンに共鳴しただけじゃなくて、へラルボニーを通じて社会を変えたいという沸々とした思いを持っている人が多くて、本当に個性豊かなんですよ(笑)。
作家だけでなく、社内の人間も異彩を放つ会社だと感じています。
──へラルボニーに入社する前から福祉業界に興味があったのでしょうか。
それがまったくなくて......。単純に、僕の目指すものがヘラルボニーにあっただけなんです。
入社後、福祉施設に行って実際に作家さんとお会いしたりしても、単純に「かっこいいな」とか「すごいな」と感じるばかり。作家の方々に対しては、アーティストとしてのリスペクトしかないです。僕も、感覚で捉えるところがあって合理的じゃないんですよね(笑)。
──福祉や障がいに対する先入観がない状態で入社されたんですね。
そうかもしれないですね。実際に働いてみたら、社会や言葉が勝手に境界を作っているだけだと感じました。もしかしたら、障がいの有無で区別しているのは人間くらいなんじゃないかなって。