Bリーガー伊藤良太が、気鋭の福祉ベンチャーの人事にキャリアチェンジした理由

誰もが公平に挑戦できる社会に

──ヘラルボニーに伊藤さんの目指すものがあったというお話ですが、伊藤さんの目指すものとは何ですか?

機会格差のない社会です。アマチュア選手の頃から、誰もが公平に挑戦できる社会をつくるために、自分も何かアクションを起こさなければいけないという使命感に駆られていて......。

僕がアマチュアからプロに転向した理由のひとつは、より影響力があるプロ選手の方が使命を果たせると思ったからなんです。そんな時にヘラルボニーと出会ったんですよ。

──岩手ビッグブルズは、2021年に岩手の沿岸地域で開催された東日本大震災復興祈念試合の特別ユニフォームをヘラルボニーとコラボしていましたよね。それがヘラルボニーとの出会いですか?

その少し前ですね。ちょうど新型コロナウイルスの感染が拡大していた時期で、SNSを眺めていたら、タイムラインにすごくかっこいいマスクの写真が表示されて、目が釘付けになったんです。

それがヘラルボニーのアートマスクだったんですけど、「ヘラルボニー? 何それ?」という感じで(笑)。

調べてみると岩手の企業だったので、すごく運命的なものを感じて、友だちに「こんなかっこいいマスクがあるんだけど、へラルボニーって知っている?」と話したら、松田文登副社長とお会いできることになって。
知的障がいのあるアーティストの作品を使ったヘラルボニーのアートマスク。このマスクの存在が伊藤さんの転機となった

知的障がいのあるアーティストの作品を使ったヘラルボニーのアートマスク


──たまたま目にした一枚の写真が、コラボユニフォームや転職のきっかけになったということですか?

そうなりますね(笑)。文登さんと初めてお会いしたとき、「知的障がいのある人が尊重される社会を実現したい」とおっしゃっていて、すごく共鳴したんですよ。

僕が目指す“誰でも挑戦しやすい社会”は、子どもたちだけでなく、障がいのある方やご高齢の方、LGBTQの方など、あらゆる人の“個性が尊重される社会”と密に繋がっているのではないかと感じていたところだったので。

──松田文登氏との出会いによって、アマチュア選手時代から抱いていた使命感がより強くなった、と。

そのままスポーツ選手を続けるという選択肢もあったんですけど、軸足をヘラルボニーに置いて、本気でヘラルボニーのビジョンに挑戦することが、自分自身の夢の実現にも繋がると感じたので、引退を決断しました。
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文=栗原羽衣子(パラサポWEB) 写真=ヘラルボニー

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