Coresight Researchでは、ライブストリーミングとソーシャルコマースを小売市場における注目すべきトレンドの一つと位置づけ、変革のためのフレームワーク「RESET」の構成要素の一つとしています。
このフレームワークは、小売企業が短期的な消費者ニーズに対応しながら、長期的な成功を収めるためのモデルを示すものです(詳細は本記事の最後をご参照ください)。
本稿では、ライブストリーミングEコマースを形成する10の主要トレンドを調査し、以下4つの分野におけるビジネスチャンスを探っています。
1. 美容、グルーミング、パーソナルケア、フレグランス
2. アパレル、フットウェア、ジュエリー、アクセサリー
3. 家庭用家具、家電、電子機器
4. 食品、パッケージ商品、サプリメント
本稿では、Coresight Researchが過去7ヶ月以内に実施した米国の消費者調査、および北米とヨーロッパでライブストリーミングを利用しているブランド、小売企業、メーカーを対象とした企業間(B2B)調査(詳細は記事末尾の調査方法を参照)の結果を基に、小売企業のライブストリーミング分野への投資状況や消費者の期待を分析しています。
市場規模とビジネスチャンス
ライブストリーミングEコマース(ライブビデオコマースまたはライブショッピングとも呼ばれる)は、中国で広く普及しており、市場は2017年から2019年にかけて20倍に成長したと推定されています。欧米ではまだ比較的新しいチャンネルですが、急速に普及しつつあります。図1に示すように、米国のライブストリーミングEC市場は2023年末までに317億ドルに達し、2021年の約3倍の規模になると推測しています。
・2020年の米国Eコマース市場全体に占めるライブストリーミングEコマースの割合は、1.0%弱と推定されますが、今後急速にシェアを拡大し、2026年には5%以上を占めると思われます。
・これに対し、市場が確立している中国では、2026年までにライブストリーミングEコマースがオンライン販売全体の17%を占めると予想されています。中国インターネットネットワーク情報センター(CNNIC)によると、2021年時点で、中国のインターネットユーザー(合計約7億300万人)の3分の2以上がアクティブなライブストリーム視聴者であるといいます。
2022年6月に実施したB2B調査では、アパレル、家電、雑貨の分野で現在ライブストリーミングショッピングを利用している調査対象企業の約半数(46%)が、その主なメリットとして収益向上を挙げています。
図1. 米国ライブストリーミングEコマース市場規模(左軸;10億米ドル)とシェア(右軸;Eコマース売上高全体に占める割合)の推移
2023年の米国ライブストリーミングEコマースを形成する10のトレンド
小売企業はライブストリーミングEコマースの収益創出の可能性をますます認識しつつあり、各社の欧米マーケティング担当者は、カスタマイズしたアプローチでターゲット消費者に合わせてキャンペーンを戦略的に展開しています。例えば、多くの美容企業は1対1のカウンセリングにWhatsAppを利用し、家庭用品企業は1対多数のセッションで啓発的価値を提供するために業界の専門家を起用しています。
本記事では、2023年のライブストリーミングEコマースを形成する10のトレンドを、大きく4つの提言に分類しています。
それは「先進テクノロジーの活用」「ライブストリーミングプログラムの推進」「消費者が望むコンテンツへの転換」「オンラインコミュニティを拡大するための人材との連携」です。
それらのトレンドを図2に示し、以下それぞれについて詳しく説明していきます。
図2. 2023年にライブストリーミングEコマースを成功させるための4つの提言、10のトレンド
(図内の訳、 ・先進テクノロジーの活用:「1.より多くの視聴者を獲得するために、複数のプラットフォームを活用する」「2. ユーザーデータの分析でターゲット消費者に効果的にアプローチする」「3.ライブストリーミングを活用してパーソナライゼーションの課題を克服する」 ・ライブストリーミングプログラムの推進:「4.定期的な配信でリピーターを増やす」「5.インセンティブが売上を促進する」 ・消費者が求めるコンテンツへの転換:「6.ライブストリームショッピングが新たな業種にも拡大」「7.ライブストリームはより教育的なコンテンツを提供するようになる」「8. 透明性に対する消費者の要求の高まり」 ・オンラインコミュニティを拡大するための人材との連携:「9.本物の会話が、オーガニックな視聴者数を促進」「10. ライブストリームで新たなオンラインコミュニティを形成する」) 出典:Coresight Research