同様に、第57回スーパーボウルも1億1300万人が視聴したと伝えられているが、その体験の中にはリアーナによる魔法のようなハーフタイムショーも含まれている。ショーはフットボールの試合の一部ではないが、NFLを体験する上での重要なピースであったことは確かだ。
マーケティングとマジックの共通点とは? 多くの場合、謎、新しさ、驚きが、観客を惹きつけ、その体験について語らせ続ける鍵となる。
ブランドエグゼクティブは、顧客体験をいかに高めるかを考えることに多くの時間を費やしている。私は、プロのマジシャンであるダン・ホワイトに、話を聞き、その魔法のような体験を通して、クチコミ、多くはデジタルメディアを通してのクチコミを生み出す方法を理解することにした。
──「誰かに話したくなる」、すなわちクチコミが生まれるようなエンターテインメントを作るためには、どのような工夫が必要でしょうか。
本当のマジックとは、人々がその体験後に語る物語の中に存在しています。それは、どんなプラットフォームであろうとも、優れたマジック効果の第一の目標なのです。トリックのどの部分が最も鮮明に記憶されるのでしょうか? 観客はこのトリックをひと言で説明できるでしょうか? これは観客を驚かせるのか、それとも想定内なのか? これは、新しいルーチンや既存のルーチンを企画し、調整する際に、私のチームと私が常に問いかけていることです。
ウィル・ギダラ(NoMadで私のショーを立ち上げた親友)は「Unreasonable Hospitality(不合理なおもてなし)」という考え方を提唱しています。それは、誰もが普通に期待している以上のことを見せることで、非日常的な体験を生み出すことです。誰もが想像できないほど長い時間練習することや、さまざまなことを事前に仕込んでおくといったちょっとした工夫は、ばかげているようにも思えますが、こうしたやりかたと本物のサプライズを組み合わせることが、特別なマジックを生み出す究極のレシピなのです。
──トリックを生み出すときの目標は何ですか?
世界で最も偉大なマジックエフェクトとは、観た人が死ぬまで語り続ける物語を残せるものです。そのストーリーを予測し、先回りして造形することが、新しいショーやルーティンのたびに、驚き、幻惑、不思議というツールを使って私がやっていることです。良いマジックを作ることは、すばらしいサプライズパーティーを企画することに似ています。人、場所、状況を織り込みながら、他人の行動や考えを予測し、純粋な驚きの瞬間を目指すのです。驚きのためにはトリックが必要で、何重にも積み重ねることでより大きな見返りが得られます。
新しいエフェクトを作るときは、まず自分が今一番こだわっているものから始めて、観客に一番驚きを与えられると思うものと組み合わせていくのが常です。その日その日で始まりのプロセスは変わりますが、最後は必ず観た人が翌日話したくなるようなストーリーで終わります。