たった1文の「詩」がTikTokで大ブーム、ただし盗作疑惑も拡大中

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TikTok(ティックトック)では、1文程度の短い率直な詩が最新のトレンドだ。多くのファンや批評家を魅了している一方、詩人たちからは、あまりにも簡単に盗作できてしまうとの指摘も出ている。

詩はティックトックで人気のコンテンツで、ハッシュタグ「#poetry」の投稿数は480億回を超え、特に人気の高い詩人は数十万人のフォロワーを獲得している。単刀直入な表現が使われることが多く、時にはたった2行の短い詩もある。すばやく読めてわかりやすい作品ほど拡散され、流れの速いタイムラインに乗り遅れたくない作者にとって成功の方程式となっている。

ティックトック・ポエムは、賞賛と同時に、最も人気のある詩のいくつかは詩と見なすには安直すぎるとの批判も招いている。

詩人のJ・ストレルーはフォーブスの取材に、1文程度の短い詩への需要によって、アイデアが被っただけだというもっともらしい言い訳が立つようになり、作家間でアイデアの盗み合いが起きやすくなっていると述べた。

ソーシャルメディア上で作品を発表している詩人の中には、より大きなプラットフォームを持つユーザーによって詩が盗作され、書籍化されたりティックトックに投稿されたりしていると訴えている人もいる。原作者は、自分の作品を盗用して利益を得ているかもしれない相手にどう反撃すればよいかわからずにいる。

ティックトックで50万人以上のフォロワーを持つアリザ・グレースは、Amazon(アマゾン)で詩集を自費出版し、ティックトックに詩の動画を投稿している。しかし、詩人のサビーナ・ローラは2022年3月、Twitter(ツイッター)で事例を挙げてグレースの盗作を非難した。過去に出版された詩やインターネット上の引用とグレースの詩を並べて比較し、単語や文法の小さな変更点を除けば同一のものが多いと指摘するスレッドは、直近では今年2月に更新され、69ツイートに上っている。

詩人のクリスティナ・マールも、自分の詩の1つをグレースがコピーし「犬」を「猫」に変えるなどの小さな変更を加えたと主張している。問題の詩についてアマゾンとティックトックに報告はしたが、知的財産侵害行為の停止通告書の送付には費用がかかり、ティックトック上では本人にブロックされていて連絡手段がないため、法的措置は取っていないという。

ティックトック・ポエムのシンプルさも、一部SNSユーザーから批判を浴びている。あるツイッターユーザーはティックトックの2つの詩のスクリーンショットを投稿し「何が起きているのかわかるまで詩作はやめよう」と書き込んだ。このツイートは13万超の「いいね」を集め「詩は/普通の文章を/小さな断片に/分割したものではない」とティックトックの詩のスタイルをまねて風刺を効かせた返信もついた。

一方、批判は理解できるが、自分の作品が読者とつながり、詩という芸術の普及に貢献したと誇らしく思う作家もいる。詩人のブレイク・オーデンは、Instagram(インスタグラム)とティックトックが「詩の民主化」をもたらしたと評価する。出版社や編集者といった中間業者を介さず、読者が気に入った作品に直接反応できるようになったからだ。「人々がもっと詩を読むようになるなら、どんなことでも良いことだ」とオーデンは語っている。

forbes.com 原文

編集=荻原藤緒

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