ニュース情報源の信頼性を評価する監視団体「NewsGuard(ニュースガード)」によると、ユーチューブ上には運営元からブロックされているはずのロシア国営テレビ「RT」によって制作されたウクライナ侵攻を正当化するプロパガンダ映画がノーカットの状態であふれている。
ユーチューブは昨年3月にRTなどロシア国営テレビ局のチャンネルをブロックした。その後、これまでに100以上のチャンネルで250本のプロパガンダ動画が公開され、それらの再生回数は50万回を超えていることが、ニュースガードによって明るみになった。
動画の多くは、ロシア軍の攻撃を受けた現場の悲惨な映像を使用しつつ、ウクライナが組織的に東部のロシア系住民を標的にしていると主張している。また、北大西洋条約機構(NATO)をナチス・ドイツの国防軍と親衛隊の「再来」だと表現している動画もある。
RTのコンテンツを拡散しているチャンネルの1つは、ロシア在住の自称ジャーナリストで元ユーチューバーの英国人マイク・ジョーンズが運営しており、もう1つは米国人の元警察官ジョン・マーク・ドゥーガンが運営している。
ユーチューブは、ウクライナ侵攻に関連するチャンネル9000余りと動画8万5000本以上をコミュニティーガイドライン違反で削除し、ロシア国営ニュース各局とつながりのあるチャンネル800以上と動画400万本以上を世界中でブロックしたとしている。
しかし、削除されるやいなや新しい動画が出現する。実際、RT編集長のマルガリータ・シモニャンは昨年「(RTの)ブランドを使わずにユーチューブにチャンネルを開設すると、数日で何百万回も再生される。3日後には(ユーチューブの)情報部門がそれを探し出し、閉鎖する」と述べていた。
一方、米シンクタンク「Digital Forensic Research Lab(デジタルフォレンジックリサーチラボ)」の報告では、戦争が長期化するにつれて、ロシアの偽情報の焦点が変化してきたことが示唆されている。
初期の軍事行動を正当化し、ウクライナの士気を低下させることに重点が置かれているのは変わらないが、ロシア側の死傷者について犠牲の大きさをごまかしたり、西側諸国の損害を強調したりすることにも力が注がれている。
これはニュースガードの調査結果にも表れており、発見された複数のRT動画が、制裁はロシアにほとんど影響を及ぼしておらず、一方で欧州経済には壊滅的な打撃を与えていると主張していた。
DFRLabによれば多くの場合、複数の競合するナラティブ(物語)が提示され、それらを一致させる試みは行われていない。こうした「オルタナティブ(代替)」の説明を作り出すアプローチは、ウクライナ情勢に詳しくない視聴者に疑念の種を植え付けると同時に、戦争を積極的に支持するクレムリンのシンパに攻撃材料を提供する。
「このような説明はメディアの雑音を生み、この戦争をよく知らない人々に『真実には議論の余地がある』との印象を抱かせ、紛争をめぐってウクライナを支援する可能性を低下させる」とDFRLabの報告書は指摘している。
(forbes.com 原文)