教育

2023.02.19

学力向上の簡単で安上がりな方法、それは「換気」

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換気によって教室内の二酸化炭素(CO2)を減らせば、「クラス人数の削減」などの他の方法よりも大幅に安いコストで教育効果を上げられるかもしれないことが、最新研究により示された。

マサチューセッツ工科大学(MIT)不動産研究センターと、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、そしてオランダのマーストリヒト大学が共同で行った最新研究によれば、学校内の空気の質は、生徒の成績に直接的な影響を与えるという。

オランダで2018~20年の2年間にわたり5~13歳の学童を対象に実施されたこの研究では、教室内のCO2濃度を測定し、生徒のテスト成績に関するデータを集めた。その結果は明快だった。CO2濃度が高くなるほど、点数が低下したのだ。

「空気の質の悪さは、広くまん延している問題であり、ほとんどの生徒集団に影響をおよぼしているようです」。この研究論文の著者に名を連ねるMITのフアン・パラシオス(Juan Palacios)はフォーブスにそう話した。

実を言えば、この研究で得られた数字は、研究者には見覚えのあるものだ。CO2濃度が上昇すると、テストの点数が標準偏差で0.11低下する――これは、パンデミック中のリモート学習後に見られた成績低下とほぼ同程度だ。

教室の換気を改善すれば、8000億ドル(約107兆円)規模の米国の教育システムにおける支出をあまり増やさずに、生徒の成績向上を期待できる。テネシー州で2012年に行われた実験では、教師の増員とクラス人数の削減により、公式目標である「標準偏差1%の点数上昇」が達成されたが、このときのコストは生徒1人あたり年間163ドル(約2万1800円)だった。それに対して、窓の開放、換気口の清掃、フィルター交換、空調設備の適切な維持という簡単な手段で達成できる「酸素増」のコストは、およそ42ドル(約5600円)だ。
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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