経済

2023.02.17 10:30

新型コロナで傷ついた中国経済の回復はまだ先、かつての勢いも期待できず

習近平国家主席が最近の発言でほのめかしたように、中国の活動再開に期待を寄せているが、習と指導層の多くは現在経済の重荷になっている弱点を明確に認識している。中国人民銀行は利下げと金融緩和を2023年も延長する用意があると発表し、財政部はこのほど経済活動を刺激するための財政拡大計画を改めて表明した。具体的な内容は乏しい。当局が示したのは「適切な」ことを行うということだけだった。とはいえ、この公約は当局がその必要性を認識していることを示している。

ことわざにもあるとおり、経済は時として急変する。だが、仮に中国が急変する素地があったとしても、それは決してはっきりと見えるものではなく、中国はいま新型コロナの症例の急増による経済面への悪影響に対処しなければならない。これは避けることができたはずだ。中国政府のゼロコロナ政策のロックダウンと検疫は国民の集団免疫獲得を阻み、効果のないワクチン接種の政策により、最も脆弱な人々が専門的な医療を必要とする例を逆に増やしてしまった。中国政府は欧州からのワクチン無償提供の申し出を拒否しさえした。原因が何であれ、新型コロナ感染者は12月下旬の部分的な活動再開で急速に増え、完全な活動再開でさらに急増する可能性が高いようだ。1月の旧正月の旅行が医療危機をさらに悪化させることが予想される。この最初の感染の波が収まるまでは、ゼロコロナのロックダウンや検疫と同様に感染拡大と死者の増加が経済活動を阻むだろう。

運が良ければ、この新たな経済面での障害はすぐに解消されるだろうが、西側諸国の経験が示唆するように、その解消は早くても春まで、場合によってはさらに長くかかる可能性がある。こうしたことから、今年の実質成長率4.8%という公式予測は楽観的に思える。ゼロコロナ政策の終了を理由に即座の景気回復を期待していた人々は、経済回復の遅れに失望するに違いない。そのような楽観論はコロナ感染が落ち着き始めた後の今年後半の経済回復に期待しているのだろうが、それがすぐさま全般的な景気回復を期待しているとすれば見当違いだ。

中国の経済が人々が期待するように早く回復するか、あるいはずれ込むのかは別として(ずれ込む可能性が高いが)、新型コロナ以前の経済活動や活発さに戻るには相当時間がかかるだろう。例えば、旅行の予約は急増しているものの、文化観光部によると観光部門全体ではパンデミック前を35.1%下回っているという。

一方、新型コロナをめぐる今回の激動から2つのことが明らかになった。1つは、中国政府のゼロコロナ政策があまり賢明でなかったことだ。新型コロナを撲滅することができず、結果的に国民を新型コロナに対してより脆弱な状態にしてしまった。もう1つは今年の景気回復の時期やその強さに関連して、経済がかつてのような猛烈な成長・発展ペースに戻ることはないことを政府が認識しつつあることだ。仮に2023年に4.8%という楽観的すぎる実質成長率の目標を達成したとしても、そのペースは今世紀初めの成長ペースには到底及ばない。

翻訳=溝口慈子

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