パンデミック前の「テクノロジー発展」の目的は?
パンデミック前の世界でも、テクノロジーの発展の目的は「より良き人間の生活」だった。しかしそれは一般個人の日常生活とは解離しており、映画でも見ているような感じで、実のところは「生活」よりも「最新テクノロジーとそのさらなる発展」に人々の興味が向かっていた。パンデミックで世界がシャットダウンするわずか数カ月前、2020年のCESに展示企業の随行の仕事で訪れた筆者は、3年前と今年のCESでコントラスを体感した。
NY在住のジャーナリストで、アメリカのZ世代の意識や動向に精通しているシェリー・めぐみさんは、「Z世代の人々は、現在のテクノロジーが使われている社会を信じていない。だけどテクノロジー自体は信じている。だからこそ使い方、使われ方が大事で、それに対してとても真剣に考えている」と言う。
これは、若い世代に迎合しろというわけではない、若い世代が、自分たちがこの先長く生きていく世界をより良きものにしたいと真剣に考えて行動している。逆に言えば、そういう意識と行動を持った人たちが若い世代というだけのことなのだ。
米国時間2023年1月5日〜8日に米国・ラスベガスで開催された「CES 2023」/ Getty Images
シャピーロ氏も6分のスピーチの中で「世界を良くする(Make the world better)」という言葉を繰り返していた。
世界ではパンデミックが起こり、紛争、自然災害、貧困、経済の低迷などの未だ継続中の不安事項であふれている。それにより、今この瞬間も目の前の暮らしや命が脅かされているのは、紛れもない人間だ。
これだけでなく、社会の中で自身の存在を脅かされるという問題も同時に起こっている。肉体的生命と同時に“存在意義”という一種の命にも相当することと言える。これらを解決し、いかに安心して暮らせる社会そして世界にしていくのか、今後その為にどのように最新テクノロジーが使われていくのか。
大切なのは、政治と同じく、そのようなことを一個人も考え、人任せにはしないことだ。まずは、問題から目を逸らずしっかり自分の目で見ることである。