聯合ニュースによれば、今回のパレードに参加した兵力規模は約1.5万人で、昨年4月のパレードの同2万人より小さくなった。在平壌のロシア大使館によれば、平壌では1月25日から30日までを集中防疫期間に定め、外出などを一部制限していた。パレードの規模縮小も、新型コロナウィルスの影響とみられる。そんななか、北朝鮮は「選択と集中」を図ったようだ。在来式兵器の数を減らす一方、核搭載ミサイルの展示に重点を置いていたからだ。
朝鮮中央通信は9日、「戦術核運用部隊」が登場したと報道した。パレードに出てきたロシア製短距離弾道ミサイル・イスカンデルに似たKN23、米国製の短距離地対空ミサイルATACMSに似たKN24など、様々なミサイルを核兵器の運搬手段として使う部隊という意味だろう。朝鮮中央通信は昨年10月10日、9月25日から10月9日にかけ、北朝鮮軍戦術核運用部隊の軍事訓練が行われ、金正恩氏が現地で指導したと報道した。北朝鮮は当時、湖から発射した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、KN23、大型の多連装ロケットなどの写真を公開した。昨年9月8日には、最高人民会議(国会)が核の先制使用を示唆した「核武力政策についての政令」を採択した。
北朝鮮は2019年以降、KN23やKN24などの試射を繰り返してきた。北朝鮮は2月8日のパレードで、「色々な新兵器のミサイルに核を搭載して戦う部隊が実戦配備されているぞ」とアピールしたかったのだろう。
では、戦術核運用部隊の攻撃目標は何なのか。ミサイルの射程から考えて、攻撃できる範囲は朝鮮半島周辺に限られるが、韓国は核兵器を持っていない。北朝鮮の「核武力政策についての政令」は、核を使用する条件として、「北朝鮮への核兵器、またはその他の大量殺りく兵器による攻撃」「国の重要戦略的対象に対する致命的な軍事的攻撃」が強行されたり、差し迫ったりした場合など5つの状況を挙げている。
北朝鮮がもっとも意識しているのは、米国が朝鮮半島に派遣する「戦略資産」だろう。米国は1月のオースティン国防長官の訪韓時などで、繰り返し、米国の戦略資産の朝鮮半島派遣を強化する考えを繰り返している。「戦略資産」は、核兵器の使用を巡る権限を他国から干渉されたくない米国に対し、韓国が配慮して作り出した言葉だ。B1B戦略爆撃機のように、核を搭載しないが、戦争の趨勢を大きく変えうる戦力を持つ戦略兵器を指す。こうすることで、韓国は、米国の核を巡る権限に干渉しないという姿勢を維持しながら、「戦略資産の朝鮮半島への派遣」を堂々と米国に要求できる。
逆に、北朝鮮からみれば、米国の「戦略資産の朝鮮半島への派遣」は、「核武力政策についての政令」が定めた「大量殺りく兵器による攻撃」を意味する。米韓両軍は2月1日と3日、F35ステルス戦闘機やB1B戦略爆撃機、F22ステルス戦闘機などが参加した合同軍事演習を行った。金正恩氏の立場から見れば、のど元に匕首を突きつけられた気分だっただろう。北朝鮮軍戦術核運用部隊のパレード登場は、「米国が戦略資産を送り続けるなら、こちらも戦術核で対抗するぞ」という暗黙のメッセージだと言える。