政治

2023.02.02

民間フェリーを利用する中国の台湾侵攻計画がもたらす悪夢

Getty Images

米空軍大将のマイケル・ミニハンが2025年に中国が台湾を侵攻すると予測するメモを司令部に提出したという報道が1月27日にあった。アナリストたちはこれまで繰り返し、中国がそれほど早く戦争の準備を整えられない証拠として同国には水陸両用攻撃能力がないことを挙げてきた。

だが最近の中国の軍事演習はこの能力不足を解消する計画があることを示唆している。その方法は市民生活に悲惨な結果をもたらす可能性がある。中国の軍事演習での民間フェリーの使用は民間資産と軍事資産の法的区別をあいまいにし、中国が台湾に侵攻するとしたらいつ、どのようなかたちで行うかを予測することを難しくしている。また、戦時国際法の中核的な原則を侵食している。

軍事目的達成のための民間船舶の利用は中国の軍事戦略の中心にある。武力紛争以外でも中国は南シナ海や東シナ海で違法な海洋主張を展開するために海上民兵を利用してきた。中国はまた、民間のロールオン・ロールオフ・カーフェリー(RORO船)を水陸両用攻撃のリハーサルに使用しており、これは武力紛争時に最前線でこれらの船舶を使用する計画を示している。RORO船はフランス・ダンケルクでの戦いで緊急避難のために英海軍が考案したものだ。車両の積載をすばやく行うために貨物船の船首や船尾に開閉式のスロープを設置したもので、この様式は民間のフェリー会社でもすぐに取り入れられた。

軍の水陸両用攻撃船は海上でスロープを開くことが可能で、小型ボート、上陸用舟艇、水陸両用戦車などを出入りさせることができる。民間のフェリーの多くはこのような能力はない。だが2016年に制定された中国国防輸送法では、輸送会社に人民解放軍(PLA)の作戦支援を義務づけ、民間のRORO船を軍規格で建造することを求めている。人民解放軍は紛争時または紛争開始前に水陸両用戦車の進水、部隊の輸送、地雷の設置、偵察と策略行為を行うためにRORO船を使用する計画を持っている。

2022年に商用RORO船30隻が人民解放軍の軍隊が行う大規模な揚陸演習に参加した。人民解放軍はRORO船の使用を偽装するために大規模なカモフラージュ、隠蔽、ごまかしを行った。2022年8月31日に撮影された衛星写真には、総トン数1万5000トンの汎用貨物用RORO船が通常の航路から1500キロ以上離れた場所でスロープを水につけ、そして背後には複数の水陸両用戦車、近くの海岸には水陸両用装甲車が列をなして待機している様子が写っている。あるアナリストの計算では、この演習に参加した渤海フェリーグループの民間船舶7隻は、人員1万人と人民解放軍重装備旅団の装備の80%以上を送り込むことができたという。

戦時国際法は武力紛争時にのみ適用される。しかし中国が平時に戦時国際法の原則を損なうことは許されない。武力衝突が始まる瞬間、あるいは船舶が正真正銘の軍事目標になる瞬間が明確であることはまれだ。RORO船はその性質、目的、用途からしてすぐに軍事転用が可能であり、標的となりうる。現在は武力紛争以外のところで活動しているが、演習での使用は武力紛争時の使用の前兆であり、これは突然発生する可能性がある。
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翻訳=溝口慈子

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