民間資産と軍事資産の境界線をあいまいにし、この「民軍融合」を国内法の下で正当化することによって、中国は武力紛争時に民間人に被害がおよぶ可能性を高めるかたちで戦時国際法を損なっている。武力紛争中、当事国は軍事目的に使用されている、あるいは敵対勢力の直接支配下にある民間船舶を合法的に標的にすることができる。戦時国際法は敵対行為に直接参加している民間人を標的にすることも認めている。しかし武力紛争中に米国や台湾は船舶が民間使用なのかそれとも軍事使用なのかを判別できず、民間船舶を攻撃する前に躊躇するかもしれない。法的には、中国は罪のない民間人や船内の民間資産を危険にさらすことに対し責任を負うことになる。だが中国がRORO船を使用すれば、米国が民間船舶を不法に攻撃したと主張する誤った口実を与えることになりかねない。
ミニハンの予測は当たらないかもしれないが、中国が民間フェリーを利用することでこれまで考えられていたよりも早く台湾に侵攻することができるかもしれない。フェリーの船隊は比較的少ない警告を受けながら軍隊を直接台湾に運ぶことができる。軍の艦隊を民間船舶で補強することによって、中国は自国の真の軍事力の推定や侵略時期の予測を難しいものにしている。
米国は中国が台湾に侵攻した場合に備えて、交戦規定を策定するために今すぐ行動しなければならない。侵攻が迫った場合、米国は民間のRORO船をいつ有効な軍事目的と見なすかを今すぐ決定する必要がある。RORO船は数百隻の護衛艦やおとり船に囲まれる可能性があり、これは交戦規定をさらに複雑なものにする。
米国はまた、中国が民間船舶をどのように軍事利用しているかを白日の下にさらすよう努めなければならない。中国が法律を悪用して領土を拡大しようとしていることを明らかにすることは、中国に戦時国際法破りを止めるよう圧力をかけることにつながる。投資家、顧客、保険会社に対して人民解放軍が利用する民間フェリー会社を支援しないよう圧力をかけることもできる。また、民間人への危害という誤った告発から米国と台湾を守り、武力紛争の際に民間人が被害を受けるリスクを低減し、戦時国際法の基本原則を維持することができる。
(forbes.com 原文)