「プロダクトアウト」は本当に悪なのか? 人々を虜にする商品のつくりかた

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マーケティングという概念が広がり、あらゆる企業にとって当たり前のものとなった。

もちろん企業間や業種間においてその習熟度に違いはあれど、B2BからB2Cまであらゆる事業者にとって、マーケティングは欠かすことのできないビジネスの武器になっている。

そんな中で、僕としてもこの2〜3年で考えを改めている分野がある。それは、主に商品開発のアプローチとして、「マーケットインに進めるのが本当に正義なのだろうか?」という点に関してだ。

マーケットインとは、「消費者の要望・ニーズを理解して商品を開発し、消費者が求めているものを求めているだけ市場に出すこと」をいう。つまりは、欲しいと分かっているモノを出す、ということだ。マーケターはこのアプローチこそが正義であると信じているし、僕自身もこれを積極的に喧伝してきた。

対義語はプロダクトアウトで、「企業側の技術や思想、販売計画に基づいて製品やサービスを市場に出すこと」である。つくったあとに売り方を考えるアプローチとも言えるだろう。実は従来の日本企業はこのプロダクトアウトのアプローチが多く、国際的な競争力を失ってしまったのはそのせいだという論調も少なくない。

朝令暮改と非難される覚悟を持って書くと、現代は一転して「プロダクトアウトでないと勝ち残れない」ような世の中になったと思う。

これからその理由を3つ紹介しようと思う。もしかしたら通説とは異なるかもしれないが、少しでも納得できる要素があれば嬉しい。

理由1:マーケットインが競争優位性に繋がらなくなってきたから

なぜマーケットインが過去もてはやされてきたのか。色々な理由があるだろうが、一番大きいのは、「他の企業がプロダクトアウトだった」からであろう。だからこそ、マーケットインであることには非常に大きな価値が存在した。

例えば極端な話、Amazonでどんな検索ワードが多いかを調べて、そこに対して適切な商品をつくるというアプローチは、究極のマーケットインである。「葉酸」と「温活」の検索ボリュームが多いので、「温活できる葉酸」のサプリメントをつくるようなアプローチだ。

ただ、これが世間に広まると、もはやそれそのものには価値がなくなってしまう。マーケットインの大前提になっているインサイトとは、「誰も気付いていない真実」であるが、マーケット参加者が同じ情報の中でインサイトを調べたら、同じような商品が増えるのは当然だろう。

顧客に従った結果、商品を差別化出来なくなってしまった、というのが大きな理由である。これに関しては、「競争としてのマーケティング」(丸山 謙治 著、ジャック・トラウト序文) に詳しく掲載されているので、もし興味があれば参考までに読んでみて欲しい。
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文=石井賢介

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