地方における挑戦 賛否両論は未来を描いて乗り越える

AGRIST代表取締役/一般財団法人こゆ地域づくり推進機構代表理事 齋藤潤一

中道:10年活動してみて、地方の課題をどんな風に見ていますか。

齊藤:一番難しいのは人の目ですね。地方では人と人との距離がすごく近い。何かをやろうとすると、褒めてくれる人もいますけど、あいつは何をやっているかわからないみたいな感じになることもあって。

こゆ財団で開発した1粒1000円のライチは今もずっと売れ続けていますが、やり始めた時は賛否両論どころか、周りの人から「売れるわけない」って言われました。自分の家族ですら、そんなことはやめろって。そういう人の声とか、人の目とかで、心が折れて行動できなくなるのは地方の問題だなって思いますね。


中道:すごくわかります。「こうあるべき」みたいなものがあって、新しい考え方とかが外から入って来るのを怖がっているような気がします。壁を感じますよね。

齊藤:とはいえ、それって心が折れる方にも問題があると思っていて。重要なのは“VISION TO THE FUTURE”だと思うんです。

1粒1000円ライチは、糖度が15度以上、50グラム以上のものをブランド化しているんですけど、ブランド化をする際に、僕には売れている世界が見えていました。このライチは日本人が尊ぶべき素晴らしいものであり、きっと売れる未来が来るんだって。脳がちぎれるまで考え抜くからこそ、その未来が見える。そこまで考えずに心折れてやめてしまうっていうは問題があると思うんです。

中道:1000円のライチはすごく美味しいから売れている。難しく考えなくてもいいし、チャンスがあるならやった方がいい。

齊藤:そうですね。実際に地方にはまだまだ眠っている宝がたくさんあって。よく「うちには何もない」って言われますが、たぶんそれは何も見ていないだけで。ライチだって僕らがやり始める前から新富町にあったんですよ。作っている農家さんが比較的多くて、道の駅とかで売られていたんです。それを我々がブランドとしてしっかり磨いて贈答用のライチにしたんです。

作っただけでは売れないし、綺麗なデザインにしただけでも売れないと思ったので、何万回もいろんな人にプレゼンしました。銀座のカフェに飛び込み営業もしましたし、僕はあらゆるイベントにライチヘッドの帽子をかぶって参加しました。それぐらい熱狂すると、その熱狂が共感を生み、コミュニケーションができ、そこに偽りがなければブランドができていくんです。

ビジョンを掲げただけだと、ただの大ぼら吹きなので、未来に向かって行動していくことがすごく重要なポイントかなと思いますね。

中道: 自分の子どもたちが、30年後、僕と同じくらいの年齢になったときに、このままの日本だと彼らがどんな体験をするのだろうか……。強い危機感があり、だから今、僕らにはやんなきゃいけない責任があると思うんです。
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文=久野照美 編集=鈴木奈央

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