健康

2023.02.04

UV光を照射するネイル用ドライヤーに皮膚がんを引き起こすおそれ

Getty Images

カリフォルニア大学サンディエゴ校の最新研究により、UV(紫外線)を照射してジェルネイルの化学物質を硬化させるネイルポリッシュ用ドライヤーが、がんを引き起こす可能性があることが明らかになった。

UVは、10~400nmの波長を持つ光だ。通常、280nmを下まわる波長は、地球の成層圏にあるオゾンによって遮断されるため、地表へ届くUV光は、280~400nmの波長のものだ。国際がん研究機関(IARC) は、100~400nmの紫外線を、グループ1の発がん性がある作用因子としている 。

紫外線を照射する日焼けマシンと皮膚がんの因果関係はじゅうぶんに裏づけられているが、ネイルドライヤーでのUV-A(紫外線A波)の使用については、公衆衛生上の大きなリスクになる可能性があるにもかかわらず、これまでほとんど注目されてこなかった。

ジェルネイルの化学物質を硬化させる際には、340~395nmのUV-A紫外線スペクトルが用いられる。皮膚がんの原因になることで知られているベッド型日焼けマシンでは、別のスペクトルの紫外線(280~400nm)が使われている。今回の研究は、それよりも長い波長の変異原性と発がん性を詳細に調べた初めてのものだ。

研究チームは、ネイルポリッシュ用ドライヤーで使われる紫外線が哺乳類細胞に及ぼす影響を評価するため、54ワットの紫外線ネイルドライヤー「MelodySusie(メロディースージー)」(電球6つ)を用いて、3種類の細胞株(成人のヒト皮膚角化細胞、ヒト包皮線維芽細胞、マウス胎児線維芽細胞)に紫外線を照射した。この装置で使用される紫外線の波長は365~395nmだ。

この3種類の細胞を、急性曝露と慢性曝露にあたる2種類の条件にさらした。急性曝露の条件を再現する際には、いずれかの種類の細胞を入れたペトリ皿をネイルポリッシュ用ドライヤーの下に置いて20分間照射したあと、別の場所に移して1時間おき、安定した状態に戻してから、さらに20分照射した。慢性曝露の再現にあたっては、1日に20分間、3日にわたって細胞をドライヤーの下に置いた。

どちらの条件でも、細胞死、損傷、DNA変異、ミトコンドリア機能障害、高濃度の活性酸素種が見られたが、慢性曝露のグループのほうが影響が大きかった。このUV照射装置を用いた20分間のセッション1回で細胞の20~30%が死に、20分の曝露を3回連続しておこなうと、曝露された細胞の65~70%が死ぬ、と研究チームは結論づけた。

ゲノム・プロファイリングでは、照射した細胞では体細胞変異が増加することが明らかになった。その変異パターンは、悪性黒色腫の患者で見られるものと似ていた。

この研究結果は、UV光ネイルドライヤーが照射する放射線が、手のがんを引き起こし、早期発症型皮膚がんのリスクを高める可能性があることを強く示唆している。皮膚がUV光に曝露されると、皮膚表面のすぐ下にある微小な毛細血管を流れる白血球に損傷が生じる可能性もある。

とはいえ、このリスクの範囲をじゅうぶんに理解するためには、大規模な疫学研究を早急におこなう必要がある。筆者は、ハーバード・メディカル・スクールの教授であったときに、UV光によるDNA損傷を研究する先進的な手法を開発した 。

「UV光ネイルドライヤーによる硬化を必要とするジェルネイル」に代わる選択肢は数多くあることから、次にネイルサロンへ行くときには、こうしたリスクを考慮し、別の方法を選ぶことをすべての人に推奨する。

forbes.com 原文

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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