経済

2023.02.04

食糧危機、インフレ、安全保障「旧来リスク」重なる2023年を導く4原則

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世界の「ニューノーマル」は、これまで数十年の進歩を通じて解決を目指してきた、食料、エネルギー、安全保障などの基本的な課題に再び取り組むことなるでしょう。私たちは、これまでの過程を振り返り、これからどのように前進することができるのか考える必要があります。

旧知でありながら全く新しいリスク

世界は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)と欧州で起きている戦争が引き起こした、グローバルヘルスと経済の課題を抱えたまま2023年を迎え、新しいながら不気味なほど見覚えのあるリスクに直面しています。世界経済フォーラムが発表した「グローバルリスク報告書2023年版(Global Risks Report 2023)」は、世界が今抱えているリスクの上位に「エネルギー」「食料」「インフレ」「生活費の危機」を挙げています。今後2年の見通しでは、「生活費の危機」が引き続き最大の脅威であり、「自然災害」「貿易および技術戦争」が続いています。

一方、今後10年では、「気候変動対策(緩和策と適応策)の失敗」が最大のリスクになるとともに、「生物多様性の喪失と生態系の崩壊」が世界規模のリスクとして急速に悪化すると予測されています。また、「地経学上の対立」「社会的結束の侵食と二極化」「サイバー犯罪の拡大とサイバーセキュリティの低下」「大規模な非自発的移住」も上位10位にランクインしました。

グローバルリスク報告書で「所得格差」が最後に上位に位置したのは、世界金融危機の余波に見舞われた2013年でした。2012年には「エネルギー価格変動」と「食料危機」が上位10位にランクインしています。こうしてみると、社会、テクノロジー、経済、環境、地政学的リスクが複合的に絡み合っている現在の状況は、特殊だといえるでしょう。

一方で、現世代のビジネスリーダーたちや公共政策立案者にとって、史実としては理解できるもののほぼ未経験の「旧来の」リスクも再来しています。それは、冷戦を背景とした1970年代の低成長、高インフレ、不安定なエネルギー情勢、低投資の時代に似たリスクです。同時に、比較的新しいグローバルリスクも発生しています。それは、歴史的に高水準の公的・民間債務、記録的なペースで進む技術開発、気候変動の影響による圧力の高まり、そして、将来の見通しに対する不安感です。こうしたリスクや課題が渾然一体となり、2020年代が、先行き不透明で波乱が多い稀有な時代になろうとしているのです。
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文=Saadia Zahidi, Managing Director, World Economic Forum

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