経済

2023.02.01

インド新興財閥アダニの空売り話でも同国株式市場は暴落しない

Getty Images

自国のエネルギー市場に巨額を投資しているインドの持株会社Adani Group(アダニ・グループ)は新興市場空売りの最新のターゲットになっている。これは問題だが、インドの問題ではない。投資家はこれを中国の「Evergrande(エバーグランデ)」不動産デフォルトのインド版と考えるべきではないだろう。

BlackRock(ブラックロック)が運用するETF「iShares MSCI India(INDA)」ではアダニの企業、具体的にはAdani Total Gas(アダニ・トータル・ガス)、Adani Enterprises(アダニ・エンタープライゼズ)、 Adani Transmission(アダニ・トランスミッション)、Adani Green Energy(アダニ・グリーン・エナジー)、Adani Ports(アダニ・ポーツ)、Adani Power (アダニ・パワー)の構成比はいずれも4%未満だ。Wisdom Tree India Earnings Fund(EPI)の上位保有銘柄でもない。

EPIとINDAは過去12カ月間、ほぼ同じ動きをしてきた。例えばアダニ・エンタープライゼズは暴走している。EPIとINDAがともに8.8%下落しているのに対し、アダニ・エンタープライゼズは過去1年間で79%上昇している。過去2年間ではインドのビットコインのように470.9%上昇しており、実際、ビットコイン(2年間でマイナス32.4%)よりはるかにいい。

中国のエバーグランデ株は2022年3月に取引停止になった。このニュースを受けて中国株は下落したが、ゼロコロナ政策はエバーグランデと同じくらい、どうしようもなくなったマーケットと大いに関係があった。MSCIチャイナや上海と深圳の上場株を対象とするCSI300指数は同10月以降上昇を続けている。

現時点でアダニ騒動が何であるかは誰もが知っている。

ここ2、3年のアダニの華々しい発展は一部の人には危険信号だった。特に、米ニューヨークの小さな投資調査会社Hindenburg Research(ヒンデンブルグ・リサーチ)にとってはそうだった。同社は1月30日、顧客にアダニは「企業詐欺」を行っていると言い、アダニの株を投げ売りするよう伝えた。同社の報告書は同24日に発表された。

ヒンデンブルグのアナリストらは、長い報告書(68の補足説明付き)の中でフォーブス長者番付の上位にランクインした富豪ゴータム・アダニ(アダニ・グループの創業者で会長)の純資産はおよそ1200億ドル(約15兆6310億円)で、過去3年で「主にグループの上場企業7社の株価上昇を通じて」1000億ドル(約13兆260億円)以上増やしたと指摘している。

「我々の調査結果を無視し、額面通りにアダニ・グループの財務内容を受け取るとしても、その主要上場7社の価値は非常に高い評価額のため、実際には基礎ベースで85%低い」と報告書の著者は指摘した。
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翻訳=溝口慈子

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