ムスリム観光客に攻めのPR 1番人気は「神戸モスク」

ムスリム旅行者向けのガイドブック「Muslim Friendly Travel KOBE」

東南アジアの訪日ビザ要件緩和やLCC就航により、イスラム圏からの観光客数は今後より増えると見込まれている。

全国で観光誘客のためムスリムフレンドリーな取り組みが進められるなか、神戸観光局が神戸を訪れるムスリム(イスラム教徒)の旅行者向けのガイドブック「Muslim Friendly Travel KOBE」を制作し、2月から配布を始める。ムスリムが安心して観光を楽しめるように、ハラルフードを提供するレストランや礼拝場所など、国内外に住む当事者のニーズを調査した上で一冊の本にまとめた。

神戸には、ムスリムの人たちが注目する熱いスポットがある。多文化共生が根付く神戸をどのように発信しているのだろうか。


実は、日本最古のモスクを表紙に

ガイドブックの表紙は、日本人観光客にはあまり馴染みのない神戸モスク。1935年に開院し、日本に現存するイスラム教の礼拝堂のうち、最古のモスクだという。世界の宗教が集まる北野異人館街エリアにある。

企画した神戸観光局が、ムスリム向けのガイドブックを制作するきっかけは、昨年8月のシンガポールであった旅行博でのこと。現地の旅行会社から「神戸にはモスクがあるからムスリムの人にとって魅力がある」と言われたことで、ムスリム対応の観光の可能性を探った。

渡辺元樹観光部長は「これまで神戸モスク自体は礼拝所の位置付けで観光スポットという捉え方はしていませんでしたが、ハラル認証された神戸ビーフもあり、ムスリム観光客にも刺さるのではないかと考え始めました」と振り返る。

これまで「広く浅く」なりがちだった観光誘客を、より深く「攻め」の戦略にするため、まず日本からも近いイスラム圏であるインドネシアとマレーシアの2カ国にターゲットを絞った。

神戸観光局はまず、神戸モスクに礼拝のため訪れた関西在住の人たち20人におすすめの観光地、レストラン、ショッピングスポットをヒアリングした。そこで神戸らしい海側エリアが人気であることが分かった。

さらにオンラインで実施したアンケート調査では、マレーシアとインドネシア在住のイスラム教徒から1726件の回答があった。興味のある神戸市の観光スポットは、神戸ハーバーランドや有馬温泉、北野異人館街など王道を抑えて、神戸モスクが一位だった。この結果から、ムスリム観光客が興味を持ちやすいように、表紙はあえて神戸モスクの写真を採用した。

渡辺観光部長は「神戸モスクへの関心が高くて嬉しかったですね。漠としたイメージが、よし行けるぞという手応えに変わりました。また海側の観光地が人気なほか、ショッピングが好きだということも分かりました」と語る。

観光名所として、神戸ハーバーランドやメリケンパーク、神戸の中華街・南京町など定番のほか、水族館とアートが融合した劇場型アクアリウム「アトア」や、鉄人28号モニュメントなどのスポットも紹介している。
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文=督あかり

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