経済

2023.01.28

平均年収が最も伸び悩む日本は「変化を嫌う」 OECD調査結果

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物価の上昇によって、2022年は実質賃金の伸びが大幅に抑え込まれる一年となった。ただ、一部の国では、こうした状況はもう何十年も前から続いている。実質賃金が伸び悩む(インフレ下で賃金が上昇していない)国は、日本やイタリア、スペインなど、高所得国のなかにもある。

経済協力開発機構(OECD)が加盟国とパートナー諸国を対象に2021年に行った調査によると、36カ国中、購買力平価で調整したフルタイム労働者の平均年収(税込み)が最も低かったのはメキシコで、1万6429ドル(約213万円)だった。インフレ調整後の平均年収は1990年以降、わずか6%の増加にとどまっている。

ただ、2022年より前に頻繁にインフレが起きたわけではない国でも、経済の低迷により、賃金の伸びが数十年にわたってほとんど見られなかった国もある──先進国の一国であり、物価も比較的高い日本は、購買力平価で調整したフルタイム労働者の平均年収(税込み)が、わずかながらもイタリアとリトアニアを下回っている。

日本の平均年収は1990年、カナダ、オーストラリア、ドイツとほぼ同水準だった。だが、それからおよそ30年の間に、これらの国の賃金が30%代半ばから40%の増加という大幅な伸びをみせるなか、日本でそうした変化は起きなかった。

変化を嫌う国? 

1990年代には技術分野のパイオニアだった日本はその後、イノベーション能力を失っている。長年にわたって経済の低成長と低インフレが続き、さらにはデフレも経験した日本は、変化を嫌う企業文化もあり、物価、賃金、さらにはその他すべてのものの大半が、停滞してきた。

こうした状況を招いたのは、低賃金の分野で働く短期契約・パートタイム契約の労働者が増加したことでもある。これがもう一つの大きな要因となり、日本でも起きた可能性のある全体的な実質賃金の上昇が、実際には起こらないものになってしまった。

一方、日本と同じような状況がみられるイタリアは、主に経済の停滞、高賃金の産業の不足、全体的な先行きの不透明感が、その主な要因となっている。こうした特徴は南欧のその他の国々、例えばギリシャやスペインなどにもみられる。
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編集=木内涼子

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