薬物依存症との戦いに野菜中心の食事が有効という研究結果

栄養豊富な食事はすべての人にとって重要だが、薬物依存に悩む人たちには特に有効だ(Getty Images)

最近の研究の傾向として、私たちの食生活と精神は、かつて考えられていたよりもはるかに密接に関係している可能性が指摘されている。

The INFINITE Studyの主任研究者、アダム・サッドは栄養摂取とメンタルヘルスの関係を理解することにキャリアを捧げてきた。最新の研究は、個人の食習慣がメンタルヘルスに著しく影響を与える場合があることを発見した。研究の発端はサッド自身の薬物依存とメンタルヘルスの問題だった。彼は食習慣を変えることでメンタルヘルスが改善されることを発見し、現在は他の人たちが同じことをする手助けをしたいと思っている。

食習慣の変化がメンタルヘルスに与える影響についてサッドが知ったのは、2010年にニューヨーク・タイムズのベストセラー作家で、自然食品や野菜中心の食事がもつ変革力を称賛するリップ・エッセルスティンが主催する7日間の集中研修に参加したときだった。

当時、真剣に受け止めていなかったが、2年後にアヘン剤と覚醒剤依存の更生施設に入所した際、サッドは研修で学んだ考え方に沿って回復し、食習慣が自身の更生の効率に深く影響を与えたことを知った。

「施設に入ったのは、人生で最も病んで落ち込んでいたときでした。1年もしないうちに、私は最も健康で最も人とつながりのある人生を送るようになりました」とサッドは野菜中心の食事に関する自身の経験について話した。

2018年に健康と栄養に関する学会でサッドは講演者となり、ディーン・シャーザイとアイーシャ・シャーザイという認知寿命および認知症の予防、回復の第一人者2人に会い、栄養密度の高い食事が薬物使用からの回復に与える効果の研究にかける彼の熱意を伝えた。ほどなくして3人は、タラ・ケンプ博士とともにチームを結成し、The INFINITE Studyを開始した。

The INFINITE Studyは、栄養および栄養教育が薬物依存の早期回復の結果に与える影響を治療センター環境下で調査した最初の対照試験だった。薬物使用障害の標準的治療に食事療法が取り入れられることはほとんどない。本研究の目的は、早期回復に与える栄養の影響を探究することだった。被験者は10週間の治療(自然食品、野菜中心の食事)または対照群(治療センターの標準的食事)を自らの意志で選んで参加した。どちらの群も食事療法の補助として栄養教育を毎週受けた。

「10週間後、治療群には回復力と自己肯定感に関して、対照群と較べて統計的に有意な向上が見られました。この2つの指標は、回復の強力な因子なので、これは野菜中心の食事が回復に有効であることを示す価値ある発見といえます」とサッドは説明した。
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翻訳=高橋信夫

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