経済・社会

2023.01.27 13:15

コスト上昇続く、価格転嫁した企業は7割弱だが転嫁率はわずか4割

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原油や輸入原材料の高騰、円安によるコスト上昇によって各分野の製品の値上げが続いていますが、生産コストの上昇分をまるごと価格転嫁できているわけではありません。それどころか、価格転嫁すらできない企業も多くあります。では企業はどうしているのか。帝国バンクの調査で、その実態が見えてきました。

帝国バンクは、2022年12月から2023年1月にかけて、全国2万7163社を対象に「価格転嫁に関する実態調査」を実施しました(有効回答率は43パーセント)。その結果、多少なりともコスト上昇分を価格転嫁できている企業は69.2パーセントでした。しかしそのうち、完全に転嫁できていると答えた企業は4.1パーセントに過ぎず、5割未満の企業が35.3パーセント。まったく価格転嫁できない企業は15.9パーセントもありました。ただし、転嫁できている企業の転嫁率は、39.9パーセントと低水準です。100円のコスト上昇に対して39.9円しか値上げできていないということです。

価格転嫁できない分をどう賄っているかについては、自社経費の削減(58.6パーセント)、ロスの削減(42.4パーセント)、生産の効率化(23.4パーセント)と、自助努力による業務の見直しをあげる企業が大半です。また、仕入れ先や外注先との値下げ交渉(16.9パーセント)、仕入れ先や外注先の変更(11.9パーセント)に出る企業もありますが、仕入れ先としては、むしろ値上げしたいはずです。

価格転嫁できない理由のトップは「取引企業から理解が得られがたい」(39.5パーセント)となっています。次いで「自社の交渉力」(25パーセント)、言い換えれば、説明してもわかってもらえないということです。3位が「消費者の理解が得られがたい」(20.1パーセント)です。すべての企業が値下げと値上げの板挟みで動けなくなっている状況のようです。

その一方で、「根拠のない値上げと思われないように、値上げの中身、要因、比率を正確に説明するよう努めている」という東京都の穀物卸売業者や、「クライアントから選ばれる存在であるために、必要な分だけの価格転嫁を行いプラスアルファの付加価値を心掛けている」という岐阜県のソフト受託開発企業など、値上げについて建設的に考える企業もありました。みんなが連鎖的に値下げを要求すれば、製品やサービスの質が全体的に落ちて、最終的には誰も得をしない結果になることは、誰もがわかっているはずです。この調査結果から現状を俯瞰するに、「みんなでわかり合うこと」が重要に思えます。コスト上昇が解消される兆しはなく、節約と効率化の企業努力もいずれは限界に達します。あとできるのは、デフレマインドから気持ちを切り替えることだと思えます。

プレスリリース:「コスト100円上昇、転嫁は39.9円 上昇分の6割は企業負担の現状 経費やムダの削減など自助努力でコスト上昇に対応」

文 = 金井哲夫

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