情報共有は、業績への影響を第一に
D&I施策は、効果が出るまでに時間がかかる。実施中の施策を数多く抱えていると、それぞれの状況を社内外にどの程度共有するべきか、迷う場面は多いだろう。そんなD&I担当者に伝えたいのは、無邪気に「報告することが大事」と考えるのは間違いだということだ。D&I施策は検討が始まったとしても、実現が困難になるケースも多い。それを、検討段階のうちから発表してしまうと、実現に至らなかったときにネガティブなイメージを与えかねない。一度期待させた施策が中止になれば、従業員のモチベーションや業績の低下、株価の下落も起こりうる。実施が確実になった施策を発表するのが、最も安全だと言える。
しかし、検討中の施策であっても公開した方が良い場合もある。私は企業でD&I施策を推進していたとき、女性活躍推進の施策については、実施が決まる前から広く進捗を共有していた。それは、業績を保つために優秀な女性従業員が会社に見切りをつけて去ってしまう事態を、早期に防ぐ必要があったためだ。
端的に言えば、「業績への影響を第一に」考えたうえで、共有する・しない、あるいはその範囲を決めていくこと。ケースバイケースになるが、リスクを認識した上で慎重に意思決定を行うことで、状況は多かれ少なかれ必ず改善されていく。