運動も食事制限も不要、脂肪細胞を直接痩せさせる方法が発見される

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2型糖尿病のおもな原因に肥満がありますが、肥満はさまざまな要因が複合的に絡み合って起きているため、食事制限や運動で解消しようとしても、なかなか一筋縄にはいきません。ならば、脂肪細胞の脂肪を直接分解しちゃえばいいじゃないか、と考えた群馬大学の研究チームが、それを実現させる方法を発見しました。そんな謳い文句のサプリを試してガッカリした人も多いと思いますが、これは直球ど真ん中の肥満解消術です。しかも、リバウンドしにくいというオマケ付きです。

肥満とは、脂肪細胞に脂肪が過剰に蓄積した状態を言います。食事によって過栄養状態になるとインスリンが分泌されます。すると脂肪細胞にALK7受容体が活性化され、脂肪分解酵素の発現を低下させます。こうして栄養は脂肪として蓄積されますが、栄養過多状態が続くと、細胞脂肪が肥大してしまいます。そうなると、インスリン抵抗性などの問題が引き起こされます。なので、ALK7の作用を阻害する中和抗体を投与すれば、脂肪の分解が促進されるという理屈です。海外では、ALK7遺伝子が変異した人は糖尿病になりにくいという知見もあるとのこと。

群馬大学生体調整研究所では、肥満マウスにALK7中和抗体を摂取する実験を行ったところ、遺伝による肥満マウスでも、過栄養により肥満化したマウスでも、脂肪重量が半減するという目覚ましい効果が確認できました。これは、脂肪細胞の脂肪分解、骨格筋での脂質の酸化が進み、栄養素の中で脂質が「優先的かつ効率的に利用された」ためだと研究グループは話しています。

また、脂肪重量が減るとともに、血糖値を下げる能力、インスリン感受性が向上して、肥満を原因とする糖尿病が改善することもわかりました。しかも、脂質の分解が進むことで心配される肝臓での脂肪蓄積、繊維化、炎症は認められませんでした。さらに、ALK7中和抗体は遺伝子の発現を抑制するため、治療を中断してもリバウンドを抑制する持続的な効果があるということです。

脂肪細胞の脂肪を直接分解するので、肥満になった原因に関わらず大きな効果があり、今回のマウスの実験においては、食事制限を一切しなくても脂肪重量が大幅に減り、合併する糖尿病も改善されました。まったく夢のような話です。一刻も早く、実用化してほしいですね。

文 = 金井哲夫

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