経済

2023.02.01

日本をリードする21人が立ち上げた「DST」、社会保障問題は解決されるのか?

「一般社団法人DST(Deta for Social Transformation)」

財務省によると、2019年度予算の一般会計歳出総額101兆円のうち、社会保障給付額は、約123兆円。これは、一般会計歳出の3分の1を占める巨大な支出項目で、2025年には140兆円、2040年には190兆円、と年々伸び続けることが懸念されている。

介護・医療・年金などで構成される社会保障給付は、超高齢化社会を迎え、既存の社会保障制度の仕組みを運用し続ける限り、財政の重みを増し将来世代への負担を残してしまう。

そこで、経済界とアカデミアが連携し、課題を発生前に食い止め、持続可能な社会システムを構築し、人々のウェルビーイングを実現するための組織「一般社団法人DST(Deta for Social Transformation)」が設立された。設立記念発表会&トークセッションで語られた「事前領域」とは? また、この研究は未来に向けた社会保障制度のエンパワメントとなり得るのか?

もう待っていられない!21人の勇者が立ち上がった

社会保障問題は、世界中で取り組みがなされている問題だ。海外では、2003年米国MIT内に創設された貧困問題の解決策を見い出す「J-PAL」や、塩分過剰接種による心臓病患者の減少から医療費削減に成功した英国政府による「UK Salt Reduction」など、エビデンスに基づいた社会変革が始動されている。

今回設立された「一般社団法人DST」の発端は、2019年9月、経済同友会にて「負担増世代が考える社会保障改革委員会」を設立。委員長にオイシックス・ラ・大地の代表取締役、高島宏平が就任し、第三者効果検証機関や、各業界で活躍するマルチテイクホルダーで構成した勉強会を経て、2022年11月、日本初となる民間主導による「一般社団法人DST」を設立した。

現在の社会保障制度は、何かことが起きた後に手当てされるシステムだが、例えば、病気になる前、介護が必要になる前、貧困に陥る前、介護離職する前、、、といった課題が発生する前の段階に重点を置いた「事前領域」の効果検証方法を確立するミッションを掲げ、いよいよ幕を開けた。

発起人は、アカデミア、経営者、テクノロジストから構成された21人。「テーマ選定」「リサーチ」「社会実装促進」という3つの分科会を設けて、分野を横断しデータを用いることでエビデンスを明らかにしていく。そして民間と行政とのイノベーション創出を促進する目的もはらんでいる。そんな「一般社団法人DST」設立を記念して12月16日に開催されたトークセッションでは、同団体の共同代表理事を務める高島宏平の挨拶&指針からスタートした。



「エビデンスが導く日本の未来」
〜社会課題解決と経済活性化を目指して〜

モデレーター:オイシックス・ラ・大地/代表取締役社長/高島宏平

パネリスト:武田薬品工業代表取締役日本管掌/岩﨑真人、Zホールディングス代表取締役社長Co-CEO/川邊健太郎、慶應義塾大学総合政策学部教授/中室牧子、慶応義塾大学医学部教授/宮田裕章
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文=中村麻美

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