川邊健太郎(以下、川邊):私の会社は、インターネット会社なので、全てがデータありきです。サーバーに人がアクセスしてくれば、データが取れる。そこで重要になってくるのは、「クリックする行為」。クリックとは、人が意志決定する時に押すわけで、個々に提供されるネットサービスは、データに基づいてさまざまな分野に応用されているのです。弊社は災害大国である日本を、国産プラットフォームとしてなんとかできないかと思っている。災害が起こる前、ユーザーに事前に行動を促すことができないかと色々と構築しているところです。
高島:災害について、ここ10年でデータの進化は、変わってきているのですか?
川邊:やはり、東日本大震災以降に変わりました。そこで行政と連動したいのは、「被災後の支援」をデータの力でパーソナライズしていくことです。被災の程度は個人差があるけれど、行政の支援は画一的だからです。そういった視点も考えていきたいと思います。
Zホールディングス 代表取締役社長 Co-CEO 川邊健太郎氏
高島:中室さんが、データを用いて感じたことをお聞かせ下さいますか。
中室牧子(以下、中室):「事前領域」、すなわち予防の重要性については、既に多くの人が知ることになったかな、と思います。私の専門は、子供の教育について。不登校や虐待であったり、様々な問題がある現在、そういう状況になる前に救済できていれば、本人も精神的に楽だし、社会的コストも抑えられると思っていて。
例えば不登校問題。いきなり不登校になるのではなくて、徐々に学校に行かなくなっているわけなのに、学校では未だに生徒の出欠状況は手入力。教育委員会に届くのは、年度末なので、その時はもう手の打ちようがない状況に陥ってしまうのです。そんな状況がある一方で、私自身、研究をしていく中の成功体験があります。
タバコについて研究をした時、従業員の喫煙率が高い職場で禁煙外来の助成を設けることで、生産性や健康面を検証しました。そこで判明したのは、1回約5.6分の休憩を喫煙者は1日で9.2回取っているという事実でした。つまり一日50分以上タバコ休憩で時間が失われていたのです。
8時間労働でタバコ休憩が約1時間。そこで、禁煙外来を受ければ、タバコをやめられ、健康面でもいい方向に向かい生産性も上がりました。結果、会社には10倍のベネフィットが生まれたのです。このように数字で示す重要性を「DST」でも検証していきたいと考えています。