経営者たちの答えのない苦しみに対峙し、彼らを『覚醒』させてきた成澤俊輔に、本誌編集長がインタビュー。発売中の『Forbes JAPAN』3月号掲載の記事を、一部抜粋でお届けしよう。
「成澤さんに聞いたことがあるんです。『本当は目が見えるんじゃない?』って」そう言って、プッと吹き出す経営者はひとりやふたりではない。彼らは経営コンサルタント・成澤俊輔の顧客である。
成澤は生まれつき網膜色素変性症という進行性の難病のある視覚障がい者で、急激な悪化で目が見えなくなった。
冗談とはいえ顧客たちが「本当は見えるでしょ?」とからかうのは、「目が見える人よりも見えている」と感じるからだ。「まるで鏡を見ているかのように、自分が気づいていなかった点に気づかされる」と一様に言い、「覚醒した」「社内のピリピリした不協和音がなくなり、前向きなものに変わった」と語る。
現在、成澤は1業種1社の65社とコンサルタント契約を結び、定期的に経営陣との面談をオンラインや対面で行う。また、「J1」という成澤の部隊が、専門的な助言を行っている。P32で紹介しているのは顧客の一部で、テレビ番組『情熱大陸』をはじめ、メディアで紹介される注目株が多い。
経営者が「覚醒した」と口を揃えるのはなぜか。成澤に問うと、経営者という資質と立場がそうさせるようだ。
「スマイルズの経営企画部本部長だった田原研児さんから、『人間には3種類ある。“匠さん、仕組みさん、おもてなしさん”です』と教えられたことがあります。経営者になる人の多くは匠さんで、本質を突く力をもつ。仕組みさんは戦略を立てて、かたちにできる人。おもてなしさんはお客さんにサービスを届ける工夫ができる人。
匠さんは好奇心旺盛で外を出歩き、会社を未来に導こうとしますが、人に頼ることが苦手で、昨日と今日で言っていることは違うし、人の期待に応えようとするあまり、自分の感情を取り扱うのが下手。それでも“伝わらなさ”を言語化しようと懸命です。その姿勢を私は尊敬しています。経営者が経営を謳歌できるように人生を整えるのが、私の“伴走”という仕事です」
そこで成澤がよく使う言葉が「とらえ直し」だ。「経営者は決断しなければならない機会が圧倒的に多く、常にどうにもならない場面に直面します。稟議書をあげる上司はいないし、失敗を人のせいにできない。どうにもならないことに対してとらえ直しをすることが重要です」。