経済

2023.01.19

「2025年までに10億人」 デジタル格差解消への挑戦と現在地

(c)WORLD ECONOMIC FORUM

「分断された世界における協力の姿」をテーマに、世界が直面する喫緊の課題への取り組み状況を共有し、インパクトの加速に向けて協力を呼びかける世界経済フォーラムの第53回年次総会(通称「ダボス会議」)。

「ダボス最新リポート」では、メディアリーダーとしてダボス会議に参加した筆者が数回にわたって世界経済フォーラムのインパクト・イニシアチブ・リーダーを単独インタビュー。彼らとの対話を通じて、「分断された世界の今」と課題解決策を探る。

第2回となる今回は、世界経済フォーラム「デジタル・ エコノミーと新しい価値の創造」部門長のデレク・オハロランに、パンデミックが企業や社会に与えた影響と、デジタル格差解消に向けた取り組みの進捗を聞いた。


──パンデミックによって、教育や医療、働き方などさまざまな物事がオンライン化されました。パンデミックは、5Gを含めたICT(情報通信技術)の活用に対する企業や社会の認識を変えたと思いますか。

間違いなく変わっていると思いますし、数字からもデジタル化の加速の一端を見ることができます。

デジタル格差に目を向けると、パンデミック発生当時は世界の人口の半数近くがインターネットにアクセスできない状態でした。パンデミックが発生してから2年間で、インターネットの普及率は過去にない勢いで高まりました。以前はインターネットを利用できない人の数は37億人でしたが、現在は27億人にまで減少しています。

通信の分野では、ネットワークを維持するだけでなく、利用拡大のために(官民や企業間で)協力することが不可欠です。インターネットを利用できない人たちに対処するにはインフラ整備の問題ではなく、サービスがあるか、そのサービスは適切な言語で提供されているか、そして最も重要なこととして、それを購入する経済的な余裕があるかどうかに焦点を当てる必要があるのです。

これは新興国に限った問題ではありません。私たちはパンデミック下において、先進国でも子どもたちや学生がファーストフードチェーン店や駐車場に座り、宿題をするためにWi-Fiにアクセスしようとしている姿を目の当たりにしました。

デジタル技術を活用して必要不可欠なサービスを享受できる状態こそが、21世紀の生活のベースになる。パンデミックは、この点について理解を深める大きな転換点になったと思います。

──世界経済フォーラムは2021年に「エジソン・アライアンス」(EDISON Alliance)というデジタルプラットフォームを構築し、デジタル格差の解消に取り組んでいます。

エジソン・アライアンスの目的は、すべての国の人々に安価で安全なデジタルサービスを提供するために、セクターを超えたパートナーシップとコラボレーションを可能にするプラットフォームを作ることです。

21年に「10億人の生活チャレンジ」を立ち上げ、25年までにヘルスケア、教育、金融サービスの3つの重点分野において、安価でアクセス可能なデジタル・ソリューションを通じて10億人の生活を改善するという目標を掲げました。これは非常に積極的で野心的な目標です。
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文=瀬戸久美子

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