政治

2023.01.24

中学生が手嶋龍一氏と、ウクライナ情勢そして「インテリジェンスの戦争」を考えた

東京都渋谷教育学園渋谷中学校の青井順生さん、伊藤澄佳さん、江見理彩さん、柴諒一郎さん、釈迦戸都さん、山澤綾乃さん(名前は五十音順)。外交ジャーナリストの手嶋龍一氏と

「いま世界は」と考えている都内の中学生6人が、国際紛争の前線で取材してきた外交ジャーナリストで作家の手嶋龍一氏を訪ね、「プーチンの戦争」そして忍び寄る核の脅威について話しあった。

手嶋龍一氏はNHKワシントン支局長時代の2001年、アメリカを襲った同時多発テロに遭遇し、11日間連続の現地中継を担うなど、世界を揺るがした事件の現場にあって「世界のいま」を刻々と伝えた。そうした体験をもとにウクライナから武器の密輸を扱った『ウルトラ・ダラー』などを執筆し、「インテリジェンス小説」という独自のジャンルを切り拓いた作家でもある。最新作『武漢コンフィデンシャル』(小学館刊)も話題を呼び、Forbes JAPAN本誌では小説「チャイナ・トリガー」を連載中だ。

今回は前編・中編・後編の3回連載で、ウクライナの地で繰り広げられている「プーチンの戦争」を取り上げ、ウクライナの戦争の本質は何なのか、この戦争の背後で繰り広げられているインテリジェンスの戦争とは何なのかを共に考えた。遥か彼方のヨーロッパで戦われている戦いを自分たちの事として受け止めてもらえれば──手嶋氏はそう中学生に語りかけた。

参加したのは東京都渋谷教育学園渋谷中学校3年生の青井順生さん、江見理彩さん、柴諒一郎さん、2年生の伊藤澄佳さん、釈迦戸都さん、山澤綾乃さんの6人である。

中編>中学生が手嶋龍一氏と学ぶ戦争の構造、プーチン戦争下「公然の密約」


ウクライナ戦争がかくも悲惨なのは何故?

僕たちはいま、どんな時代を生きているのだろうか。東京という大都会の渋谷にある学校に通い、いつもと変わらない暮らしを営んでいるように見える。

その一方で、君たちと同じ年頃の若者が、ウクライナの地では厳しい冬を迎えて暖房も満足にないなか、いつ飛んでくるともしれないミサイルの恐怖に怯えている。遠く離れた「地図」のなかに暮らす同じ世代がいる。そう考えながらいまを生きることは時に大切ですね。きょうは、皆さんと一緒にいまの時代を考え、現代史を旅してみようと思います。

はるか彼方のウクライナの地で突如始まった戦争は間もなく1年になろうとしています。日本で暮らす我々は、この悲惨な現実を前に何ができるのか。まず、“プーチンの戦争”とはいかなるものなのか、検証してみましょう。

プーチン大統領は2022年9月末に、ウクライナの4州を強制的に併合すると宣言しました。下の図はその様子です。ヘルソン州に走っている白い線はドニエプル川ですが、いまは西岸にウクライナ軍が攻勢をかけ、押し戻しています。



しかし、プーチン大統領の理屈では、この4州は強制的に併合され、ロシア領になってしまったのです。プーチン大統領はこれに先立つ9月21日、予備役の30万人を徴収して前線に送りこむと発表しました。
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編集=石井節子 撮影=曽川拓哉

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