政治

2023.01.24

中学生が手嶋龍一氏と、ウクライナ情勢そして「インテリジェンスの戦争」を考えた

東京都渋谷教育学園渋谷中学校の青井順生さん、伊藤澄佳さん、江見理彩さん、柴諒一郎さん、釈迦戸都さん、山澤綾乃さん(名前は五十音順)。外交ジャーナリストの手嶋龍一氏と

弾道ミサイルは大気圏の外に打ち上げ、再突入して標的を狙いますが、巡航ミサイルは弾頭に火薬を詰め、精緻な誘導装置を内蔵して、超低空でするすると飛行して標的を攻撃しました。そのためウクライナはいま、深刻な電力不足に見舞われています。

ウクライナの都市は、熱湯を集中的に沸かして、パイプラインで各戸に供給する暖房システムをとっています。ですから、発電施設が攻撃されると暖房施設が動かなくなってしまう。暖を取るため暖炉を薪をくべたりしてしのがなければなりません。ウクライナ国内はいま、そんな厳しい冬を迎えているのです。青井さんたちも、わが事としてこの寒さを想像し、ウクライナの戦いを思い浮かべてください。



ロシア軍は祖国防衛戦争にとても強い軍隊、だが──

ロシアは「祖国防衛戦争」にはとてつもない力を発揮する国家であり、国民です。第二次世界大戦ではスターリングラード攻防戦を戦い抜き、あのナチス・ドイツ軍を撃退しています。

装備ならナチス・ドイツ軍が圧倒的に優勢だったのですが、当時のソ連が勝利を収めたのは、われらが祖国を侵略から守り抜くという大義が人々の側にあったからでしょう。スターリングラード攻防戦では、まさしく「大祖国戦争」として戦われ、夥しい数の犠牲者を出しながら、ロシアの人民は自分たちの国をついに守り通しました。それをいまも誇りに思っています。



──(江見)それでは、今度のウクライナの戦いは、戦うロシアの人たちの側に、その大義というものがないんですね。


まさしくその通りです。江見さんが兵士として徴集されれば、同級生だった友人を打たなければならない。それが、いまの“プーチンの戦争”の現実なのです。これでは士気が上がるはずはありません。ですから実際にウクライナ軍に押し返されている。ウクライナの人々がいま“祖国防衛戦争”を戦っているのです。

ロシア軍も厳しい冬を迎えていますが、現在のところ停戦のきっかけはつかめていません。そして、現代史のなかで戦われている“もっとも悲惨な戦争”はいまも続いています。あらゆる戦争が望ましいものではありませんが、ウクライナの戦いは、悲惨さの質が格段に違う、悲惨な戦争といっていいでしょう。

──(伊藤)とつぜん、自分たちにはよく納得できない理由で戦争が始まり、もともとは同じ民族だった人たちと戦わなければならない──私たちが歴史の授業で学んできた戦争と比べても、いまのウクライナの戦いがとても悲惨だということがよくわかります。

そうですね。いまこの地球上で起きている出来事について、もし自分がそのさなかにいたら、と考えてみることはとても大切だと思います。

ただ、いつもそうしていると、つい感情的になったり、当事者の立場に寄りすぎて大局を見失ってしまう心配もあります。ですから、ときには視点を引いて事態を高みから眺めてみることも必要です。熱き心を秘めながら、頭は冷静に。いま繰り広げられている出来事には、そうした異なる視点、そう複眼的に眺めてみることも大切ですね。
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編集=石井節子 撮影=曽川拓哉

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