多数のメディアが「米海兵隊が新部隊を創設する方針を固めた」と報じたが、すでにMLRの構想は2020年3月に米海兵隊トップ、バーガー総司令官の名前で公表した「フォースデザイン2030」で公表されていた。米海軍協会のUSNIニュースなども繰り返し報道するなど、専門家の間では広く知られた部隊構想だった。陸上自衛隊と米海兵隊は21年12月、接近する敵を迎撃する実動訓練「レゾリュート・ドラゴン21(RD21)」を日本各地の演習場や駐屯地などで実施した。RD21は、米海兵隊が海兵沿岸連隊に改編されることを想定して行われた訓練でもあった。
関係者の間では既成事実になっていた改編だが、今回の2プラス2で「25年までに改編」と時期を区切った。30年の新しい海兵隊像を描いた「フォースデザイン2030」当時の構想から、5年前倒しにしたことになる。米政府内には、台湾有事は当面起きないという見方が支配的だ。ただ、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官が2021年3月に「6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と米上院軍事委員会で証言したこともあり、米海兵隊は地対艦ミサイルの開発や沖縄近辺での降下訓練の実施など、準備を急いできた。日本も25年度には射程を延長した地対艦ミサイルの開発を終える予定だが、米国の動きは日本よりもかなり速い。日米関係を担当した米政府の元当局者が「日米の合意内容は十分評価できるが、まだまだスピードが足りない」と話すほどだ。
2プラス2共同発表文は「日本の南西諸島を含む地域において、日米の施設の共同使用を拡大し、共同演習・訓練を増加させる」とも指摘した。沖縄本島のほか、すでに自衛隊駐屯地がある奄美大島、宮古島、与那国島、3月までに駐屯地を開設する石垣島などで米軍の基地使用や日米共同訓練の実施が行われる可能性が高い。現地の人々には自衛隊はともかく、米軍に対する警戒心は根強いものがある。住民感情に配慮しながら、細心の対応が求められることになる。現在、日米両政府の間では、新しい防衛協力の指針(ガイドライン)を策定する話は出ていないという。確かにこれだけ、現場が忙しければ、新しい文書をまとめている余裕などないのかもしれない。