本間真彦が代表パートナーを務めるインキュベイトファンドは、Thinkingsが20年10月に行ったシリーズAラウンドで出資。22年6月のシリーズBでは、リードインベスターとして追加出資した。なぜ本間は投資したのか。
本間:SaaSのビジネスは、お金がかかるし、チームビルドも必要で、初期からVCと手を組まないとなかなか立ち上げられない。その点、Thinkingsには不思議なところがあって面白いと思いました。合併して設立されたという成り立ち、そして、外部からの資金調達なしで、従業員100人の規模まで成長させていたことです。SaaSの会社でそんな事例は聞いたことがなかった。圧倒的な成長を遂げていくために、外部の知見や資金が欲しいというおふたりとの議論もすごく盛り上がり、投資したらうまくいくだろうと感じました。
瀧澤:吉田とは、20年近く前から仕事で付き合いがあった仲なんです。僕は当時すでに独立していて、12年には「sonar ATS」を開発していました。それで、これをどうやって売ろうかと吉田に相談したら、すごく好感触で。彼がちょうど起業するタイミングだったこともあり、開発と販売で役割分担をして、このビジネスを大きくしていくことになりました。いつか一緒の事業体になったほうがいいよね、という話はその後、何度かしていて、結果として20年にいまのかたちになったんです。
吉田:2社に分かれていたことは、調達をせずに成長できたことと無関係ではないと思っています。プロダクトをつくって売るときに、ひとつの会社の中だと、開発側の意見が強過ぎて市場が見えなくなったり、逆にセールスの意見が強すぎてプロダクトがおろそかになったりして、失敗することがある。僕たちは会社が別々だったけれど、目的は一緒で、お互いが緊張感をもちながら頑張り合えるいいバランスだったんです。
本間:合併すると役員のなかから退職者が出るものですが、Thinkingsの場合、全員が残っている。いろんなことが絵に描いた通りに進んでいて、僕の経験からするとそんなことは普通あり得ないので、逆に怪しいと思ったほど(笑)。でも、2人の関係性や歩みについて根掘り葉掘り聞いていくと、絶妙なバランスで成り立っていることがわかりました。