サプライチェーン管理がより重要に
企業にとってSDGsは事業のチャンスを示すリストであると同時に、リスクの洗い出しにも役立つ。これまでは環境、人権、法令、労働が主なリスクだったが、今は健康、世界の情勢、そして地政学的リスクが重要要素として加わったといえる。
特に地政学的リスクは、サプライチェーンの各段階がどの国で行われているかにかかわる。米国などでは、CSRを超えてCPR(Corporate Political Responsibility:企業の政治的責任)という表現も使われている。元々は政策へのロビー活動をはじめとする企業の政治活動や政治・政府との関わり方をとらえた考え方だが、参考になる。CPRのためにSDGsを「混迷の時代の羅針盤」として活用するのである。
これまでは企業がSDGs 経営に取り組むメリットとして、社会課題の解決を通じた新たなビジネスの機会、といった文脈で“チャンスの面”が強調されることが多かったと思う。
しかし、今回のコロナ禍やウクライナ侵攻によって、SDGs がリスク管理にも活用できることに注目が集まった。先進的な企業ではSDGsのターゲットに基づき、サプライチェーンにかかわるリスクを洗い出しているのだ。
サプライチェーンに最も関連する目標は12「持続可能な生産と消費」である。この目標には、次のようなターゲットがある。
「2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発および自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする(12.8)」
このように、消費者から持続可能なライフスタイルに向けた情報開示が求められる中で、調達や製造の現場からの情報に対し、SDGsやサステナビリティ部門がチェック役となる必要がある。そして何よりも重要なのは、経営層がSDGsを「経営マター」として捉え、責任あるサプライチェーン・マネジメントを行うことだ。
例えば、認証マークを取得済みの原材料を使用する、工場の労働環境をチェックする、といった配慮を行うこと。社会的責任を果たすためには、適宜現地視察や調査も必須であろう。
そして、サプライチェーン・マネジメントの担当者は常に世界で何が問題になっているのかをウォッチし、SDGsを羅針盤として自社に照らし合わせて先読みして対処することが重要だ。