ビジネス

2023.01.01

ファミリーマート代表取締役退任後、初めて語った「私が社長を辞めるまで」

植野大輔・澤田貴司


これから描くシナリオは?


植野:この連載ではCxOの条件を伺うんです。

澤田:なんか陳腐な感じがするよ、CxOって。うわべで踊りまくって本当にその役割を果たしている人がどれほどいるのかな。役職よりも、その役割を果たすこと。本当にコントリビュートできているかが大事なのに。

会社って一人ひとりの力は小さくて、結局は組織運営。同じ方向に組織が向かい、いかに力を合わせ、後出しジャンケンせず、「あのときこう言えばよかった」とかくだらないことも言わず、一枚岩で頑張っていくしかないじゃない。

植野:経営チームをつくるのは絶対にひとりではできないから、それぞれの責任者、専門性のある方が集まってチームを組むわけじゃないですか。

澤田:それもすごく大事。ただ、それぞれの部門のリーダーたちにCが付いていると思うけど、本当に「リーダー」として振る舞えているかは疑問だね。チームをつくったから満足ではなくて、厳しくモニタリングしなきゃいけない。人事という重い責任のある役割はトップに立つ者にしかできないし、自分自身が切られるかもしれない。

でも、それが当たり前。ファミマは僕がやりたいように全部決められたので、本当にありがたかった。じゃなかったら社長なんてやってられないよ。柳井さんのときは、それが多分できないだろうなと思ったから断ったので。そんなものだよね。

植野:澤田さんが次に何を仕掛けるのか、皆さん気になるところです。

null
「経営チームをつくるのは一人ではできないから、それぞれの責任者や専門家が集まるんです」植野大輔

澤田:いろいろやっているけど、ロッテベンチャーズ・ジャパン代表になりました。僕の大好きな、公私にわたってお世話になっている重光昭夫(※4)さんをお手伝いしています。ベンチャー企業に投資していくんですよ、国内も海外も。ウェルビーイング、ヘルス、バイオ、いろんなところをターゲットにするけど、もっとワイドに対象会社を見ている。すでに60、70社ぐらいの経営者と会って出資も何社か決めました。面白くてめちゃめちゃ勉強になる。

植野:投資先の経営者に会い、澤田さんが目利きするのか。投資先に気合いを注入して応援するのか。

澤田:僕は、自分でやりたいことより、求められる役割を果たすことを大事にしてきました。いまの僕は投資家なので、どうやって執行者の事業をハッピーに創造し、成長させられるかを応援する役割。そのためにできることを全力でやりたいね。

楽しいのがいいよ。ロッテの皆さんも真面目で素晴らしいけど、これからヤンチャして「ちょっと待て、やりすぎだ!」って俺が止めるぐらいまでいってほしい。実際、俺が知ってるファミリーマートの最後のほうは、そういう感じになれたから。「おいおい、いいのかよ?」みたいな(笑)。

植野:「忖度御膳」を見ならえ、と。

澤田:ファミマもロッテも、皆さんもっとガンガンやってほしいな。絶対そのほうが楽しいから!
次ページ > 「CxO」のビジョン、三カ条

文=神吉弘邦 写真=有高唯之

この記事は 「Forbes JAPAN No.100 2022年12月号(2022/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事