ビジネス

2023.01.01

ファミリーマート代表取締役退任後、初めて語った「私が社長を辞めるまで」

植野大輔・澤田貴司


できない理由はリーダーに不要


植野:ファミマではオペレーション改革を成しとげ、マーケティングも計画性あるかたちに大きく変えました。

澤田:マーケティングという薄っぺらな言葉じゃなくて、組織活動だよな。商品をどう開発し、どうつくり、どう現場に落とし込むか。どう現場の人たちにお届けして、どう理解してもらい、どう販売するか。それをどうプロモートするか。その全部がシームレスに連動すれば、たとえ間違っても修正できる。会社全体の活動を合理的にちゃんと回していくかが、いちばん大事なんです。

植野:当初は各部署の出自がバラバラで、局所的な対応をしていましたね。

澤田:工場バラバラ、物流バラバラ、最高だった(苦笑)。あんなカオスのなか、よく社員はまとまっていってくれたよ。いま、何もつかえがないように回っている感じになったのはすごいと思う。

植野:連動し始めた手応えはいつ頃から?

澤田:社長を降りるぐらいだな。5年かかったけど、後半はいろんなことが整理できたので大体回っている感じがしたね。シナリオ通り、淡々とやるべきことをやれたんじゃないか。

植野:辞める時期も初めから決めていて、4〜5年をどう使うかもイメージされていた。

澤田:その通り。ここで質を高めようとか、店舗の統廃合しようとか、ほぼイメージできていた。やったのは構造改革です。あとは「ワン・ファミリーマート」にして、みんなで一丸になって仕事をしていく体制をつくって。

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「CxOって陳腐な感じ、うわべで踊りまくって。役割を果たしている人がどれほどいるのか?」澤田貴司

植野:社長が全国の店を足で回りまくって、加盟店の気持ちに火を付けた。

澤田:これからファミリーマートの再成長にはいろんなステップがあるだろうけど、僕の代で整理整頓はできた。僕がやったというより、みんながよく理解してくれてやってくれたんですが。

植野:思い出深いのは「忖度(そんたく)御膳」の大失敗。

澤田:あれは2017年の流行語大賞に「忖度」が絶対に来ると思って準備したら、実際に選ばれちゃったの。めでたい=金目鯛とか、腹黒い=のどぐろとか、キーワードごとに高級食材を入れた弁当をつくったら原価が高くて800円ぐらいで売ったんだよな。

植野:(笑)。

澤田:伊藤忠から「こんなの誰が考えたんだ!」と言われて「社長の俺がやりました」って(笑)。それも実は確信犯で、もっと商品本部に面白おかしくやってほしかったんです。

植野:それまでは、真面目に手堅くでしたから。

澤田:ああいうチャレンジを勢いでやって、失敗したら二度とやらないとか、すぐに限界を決めるといったことが大嫌い。やっぱり発想の自由ですよ。みんなが挑戦するような環境をつくらないと。できない理由をのたまうリーダーなんて要らないね。

みんなと力を合わせ、同じゴールに突き進む組織運営ができたのは、40社ぐらい会社をつくってたくさん失敗もして学んだ結果です。うまくいかなかったときには、やっぱりチームになっていなかった。ファミリーマートではみんなが働く様子を現場で見て、アンケートとかいろんなことをやって、ようやく集大成にもっていけたんです。

植野:社長を退いて、副会長も1年やって見届けた。俺がいなくてもファミマのチームは大丈夫だと。
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文=神吉弘邦 写真=有高唯之

この記事は 「Forbes JAPAN No.100 2022年12月号(2022/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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