経営者は、“確信犯”たれ
植野:日本中の小売りの経営を見てきた澤田さんの目にファミマはどう映りましたか。
澤田:統合に次ぐ統合で、まさにカオス。am/pm、ココストア、サークルKとサンクスも企業文化や仕組みが統合しきれてない。いろんな人がいろんなことを言うし「なんじゃこりゃ、動物園か!」と。こういう仕事は大好物だけど、やっぱりえぐかった(笑)。
誰も整理しないまま、現場にあらゆることがしわ寄せされて、いろいろな課題が放置されていました。宅配便だけで100ページあるマニュアルを誰が読むんだよ(苦笑)。それでいて「店舗のオペレーションがうまくいかないのは現場の責任だ」と。お客さんに接する人たちがハッピーに仕事するのが原理原則。現場で働く20万人のストアスタッフが苦労しているなら、そこから手をつけるのが大事でしょう。
植野:改革の手応えは早々につかまれた?
澤田:俺、経営って“確信犯”だと思うんだ。サプライズは経営に必要ないな。ゴールを決めて着々と近づいていく。上に立つ人間が右往左往していたら部下が大変。だから全部シナリオを書くよね。
植野:そのスタイルはどこで身に付けたんですか。
澤田:いちばんはユニクロ。柳井さんの下でやったものは圧倒的に勉強になった。
植野:最初のフリースのブームも計算して起こせた?
澤田:あれはたまたま打てたホームラン。それからエアリズム、ヒートテック、ウルトラライトダウン、季節に応じたものを柳井さんと計画的につくって当てにいった。売り場をつくり、「絶対に売るぞ!」と社員をモチベートし、チラシを刷り、テレビにも乗っけて、いろんなところでバズらせることを計画的にやったわけ。
植野:反対に、当時のファミマは販促計画が十分でなかった印象です。
澤田:だから営業と商品とマーケティングにきちんとキャンペーンの計画を立てさせた。ユニクロは52週計画もたぶん2年先までつくっているね。原料調達から全部を緻密にやっている。
計画性とモニタリングの徹底、これは柳井さん。でも、商いの根本はイトーヨーカ堂の伊藤名誉会長(※3)から。俺が伊藤忠の課長時代、会長室に呼ばれて「澤田くん、この店を見てくれ」「こんなことで悩んでるんだ」という具合にかわいがってくれた。一緒に現場を回らせてもらうと、物流に遅れはないか、困ったことは最近ないか、現場で働く人たちが幸せになるために話を聞き、お客さんの声も聞いてやっている。人のために尽くす姿にビックリしました。
植野:まさに「利他」。
澤田:感動したね。そこから小売りというのは、利他ができないといろんな人の理解が得られず、組織が瓦解(がかい)するんだなと強く感じるようになったんですよ。