そして3つめの強みが、映画ファン向けサービスの充実。映画製作の川上から積極的に参加しているほか、川下では全国の映画館チェーンと連携して、U-NEXTで貯めたポイントを映画のチケットに交換できる仕組みも取り入れている。映画づくりから劇場公開の一次利用、そして二次利用以降も含めて、映画をトータルで楽しんでもらえるサービスを提供している。
こうしてエンタメファンの心を掴んでいる一方、「マス」に訴求するブランディングやオリジナル作品の製作が、次の課題となっていた。
なぜオリジナルコミックに参入?
そこで、11月にオリジナルコミックレーベル「U-NEXT Comic」を設立。オリジナルのコミック作品からゆくゆくは映像化にもつなげ、IP開発を目指す。現状、日本のIPの多くは出版業界から生まれているが、動画配信サービスがそこに乗り込む形となる。
ただ、電子出版の世界では、すでに様々なアプリでオリジナルのマンガ作品が出ているため、後発感は否めない。それでも堤は、異なるジャンルが1つのアプリに集合するU-NEXTのサービス形態に勝機を見出している。
「U-NEXTのユーザーは、映像のみならずコミックや小説も楽しむ方が多く、電子書籍がかなり伸びています。自社でそういった経済圏を持っているので、オリジナル作品が受け入れられやすいのではないかという発想です」
2021年4月頃から漫画編集者を集めて編集チームを立ち上げ、漫画家の開拓を始めた。新人を発掘し、連載型で作品を配信しながら育てていく方針だ。
今回、オリジナル作品第一弾として発表されたのは、『五十嵐夫妻は偽装他人』(海石ともえ)『人気俳優、中身はうちの猫。』(和時シキ)など、女性向け3作品と男性向け2作品の計5作品。ジャンルは限定せず、ある時は電子書籍の市場データやU-NEXTユーザーの視聴データから着実に数字を狙う作品を、またある時はIPとしてスケールする可能性を模索したチャレンジングな作品を打ち出しながらバランスを探っていく。
「量と質を両方とも担保しながら、映像化が実現するようなIPを継続的に生み出していきたい。日本のIPは海外からの評価も非常に高いので、将来的には海外での映像化も目指しています。映像化によってコミックがまた国を超えて流通していくという流れができれば面白いのではないかと思っています」