──鍵を握る「SX」とは何か。
気候変動や人権、生物多様性といったサステナビリティ課題は多様化している現在、企業の取り組みが社会や世界と異なる方向を向いては意味がない。
それらはリスクであることを超えて、経営戦略の根幹をなす要素になっているからだ。だからこそ、社会の持続可能性の向上という「社会のサステナビリティ」と、社会の持続可能に資する長期的な価値提供、企業が長期的・持続的に成長原資を生み出す力(稼ぐ力)の向上という「企業のサステナビリティ」の「同期化」が必要だ。
同期化ができてはじめて企業の持続可能性が実現できる。そのために必要な経営・事業改革が「SX」だ。SXこそこれからの「稼ぎ方」の本流になるだろう。SXのなかに、GX(グリーン・トランスフォーメーション)があり、それらを推進するうえでDX(デジタル・トランスフォーメーション)と一体的に取り組むといい。
同レポート公表と同時に、SX実現に向けて、「価値協創ガイダンス」も改訂した。長期の時間軸で経営・事業変革をするための「長期戦略」の項目も新たに加えた。投資家などとの長期目線の対話をもとに、社会の持続可能性を踏まえた自社の価値創造ストーリーを構築することが必要だと考えている。サステナビリティが日本企業の「稼ぐ力」、「企業価値創造力」をもう一段引っ張る力になるだろう。
──「人材版伊藤レポート」も改訂した。
「人材版伊藤レポート」については、「『破壊力』というほどの影響力があった」といわれたほど反響があった。経営戦略と人材戦略を同期させ、人を「資本」と位置付けて、いかに人的資本の価値を高める組織を整備するか。人的資本への投資、人的資本経営が重要だと強調した。人材戦略に求められる3つの視点と5つの共通要素を指す「3P5Fモデル」も提示した。
最近注目を集めるリスキリングなどもそのひとつだ。その後、21年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂で、人的資本に関する情報開示が求められるようにもなった。