大槻華乃子氏らによる岡山大学大学院と農業・食品産業技術総合研究機構の共同研究グループは、種の保存法で国内希少野生動植物種に指定されているスイゲンゼニタナゴという淡水魚の「環境DNA」を分析することで、その生息の有無が推定できる調査方法を開発しました。
環境DNAとは、水中に排出された糞や粘液に含まれる、その生物由来のDNAのことを意味します。水を汲んで、そのなかの環境DNAを分析すれば、その生物がどのくらい生息しているかがわかるという理屈ですが、この研究の要は、特定の種(この場合はスイゲンゼニタナゴ)のDNAだけをリアルタイムPCR法で特異的に増幅するための手法にありました。
実験では、スイゲンゼニタナゴを1匹だけ入れた水槽と、5匹入れた水槽を使い、DNAの検出を試みました。すると、両方の水槽から環境DNAが検出され、さらに1匹の水槽よりも5匹の水槽のほうが検出量が多いことが確認されました。また、長く泳がせると、それだけ検出量が増えることもわかり、生息の有無の数値化が可能であることが実証されました。
フィールド調査では、スイゲンゼニタナゴが生息する水路の48地点で採水を行い、実際に魚を捕獲してその関係を調べました。すると、DNA濃度の高い上流地点で21匹が捕獲されました。濃度は下流にいくほど薄くなり、そのことから分布の推定も可能だと判明しました。
簡単な機材で短時間に生息の状況がつかめるこの調査方法を使えば、生息が確認されている水域のモニタリングはもちろん、新たな生息地の発見も可能になると期待されています。この研究はスイゲンゼニタナゴに限ったものですが、ほかの水棲生物にも応用できれるといいですね。