物価高騰が続く英国、実質賃金低下で「危機的状況」の看護師がスト

2022年12月20日、ウェールズのカーディフにあるヒース病院でストライキ中の看護師たち。ウェールズ政府はNHS職員に4%から5.5%の賃上げを提示しているが、看護師は19%の賃上げを求めている。(Photo by Matthew Horwood/Getty Images)

英国最大の看護師の労働組合、王立看護協会(RCN)は、年明けにはさらに大規模なストライキにより、国内各地のより多くの病院が深刻な影響を受けることになると警告している。

国民保健サービス(NHS)が運営する医療機関の看護師などで組織されるRCNのストは、イングランドと北アイルランド、ウェールズで12月15日から開始され、看護師数千人が参加した。20日からは2回目のストが行われている。

RCNは、物価の高騰が続くなか、実質賃金が大幅に減少していることへの政府の対応を求めている。政府が対応を拒否すれば、RCNは年明けにさらに規模を拡大してストを実施する計画。看護師が出勤するエリアや行う業務をさらに絞り込む方針だ。

RCNの幹部らは、11月にストの実施計画を発表して以来、スティーヴ・バークリー保健相などに協議を申し入れてきたという。だが、政府は交渉に消極的だったとされている。

RCNのパット・カレン事務局長は、「政府の対応を求めたが……政府は私たちを無視することを選んだ」と発言。同時に、「私たちが患者を見放すことはない。だからこそ、私たちは今日、ピケラインを張っている」と述べている。

英紙オブザーバーによると、保健省と財務省の高官らは現在、問題の解決に向けて協議を進めている。また、RCNは政府に対し、年明けに計画しているストについて、22日までに対応を示すよう要求しているという。

カレン事務局長は、1月に実際にストを実際した場合、「より多くの病院とより多くの看護師が参加することになる」として、「2023年は、すべての人にとっての新たなスタートとなるべきだ」と話している。

NHSに関する情報を伝えるヘルス・サービス・ジャーナル(HSJ)によると、15日から始まったストに参加しているのは、イングランドにある39の病院で働く1万人近い看護師。公共の医療サービスは主に人員不足により、救急医療もその他の医療も、施設・在宅での介護ケアなどのサービスもすべて、危機的な状況が続いている。

一方、政府はストが実施される日には、救急車サービスに影響が及ぶことが予想されるとして、軍を動員することを発表している。

病院以外でもすでにストが継続


英国では数カ月前から、物価の高騰を理由に多くの産業分野でストライキが行われている。年末年始の休暇中は旅行者が増加することから、交通機関でさらなる混乱が起きると予想されている。

特に航空業界は、欧州の航空会社に加え、英国国境局の職員が23日から大みそかまで、複数の空港でのスト実施を計画しており、影響は大きいとみられている。

すでに何カ月にもわたって混乱が続いている鉄道も、クリスマスから新年にかけて複数の労組がストを行う予定。ロンドンとフランス、ベルギー、オランダを結ぶ高速鉄道ユーロスターでも一部の職員が、22~23日にストを計画している。

forbes.com 原文

編集=木内涼子

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