「日本には働きたい会社がない」
永田たちは自社を否定されたように感じ、面食らったという。CFOという壮大な実験は会社の何をかえたのか──。
環境や健康の社会課題解決に取り組んできたユーグレナがCFOの取り組みを始めたのは2019年のこと。応募条件は「18歳以下」。選ばれたCFOはこれまで2代にわたり、同社のフィロソフィー「サステナビリティ・ファースト」を進めるための提言や活動を行ってきた。
そして2022年、新たに3代目CFOとして就任したのが、16歳の高校生・渡部翠だ。
「マレーシアで8年間暮らしていた時、貧しい人々や難民のためにボランティア活動を行うなかで、環境や人権の問題を強く意識するようになりました。CFOを通じて若い私たちが何を考えているのか伝え、希望のもてる社会をつくるための提案ができるのはとても魅力的でした」
3代目CFO就任式で社長の出雲から渡部にユーグレナの名刺が手渡された。
ほかに例を見ないこのCFO制度はどのように創設されたのか。ユーグレナ代表取締役社長・出雲充が語る。
「ダボス会議でMITのアレックス・ペントラント教授が、変わることができる組織の条件として“Talk a lot, Talk equally, Talk outside”を挙げていました。たくさん話すこと、フェアに話すこと、そして〈よそもの〉と話すこと。同じような属性の人と話すだけでは考えが固定化されてしまう。未来を予測できなくなっているいま、変化し続ける会社でいるための触媒として、18歳以下の若者に会社に参画してもらうことにしました」
永田は、社会や大企業が変わらないことに危機感を募らせCFOを推進しているという。
「菅前総理が2050年までにカーボンニュートラル(脱炭素社会)実現を宣言しましたが、他社と関っているとあまり自分ごと化されていなと感じることがよくあります。その頃には自分たちはいないから、業界や会社が言うから……と。経済界では比較的若い40代の自分でさえ、もっと未来の問題を自分ごと化する必要があると思いました。そこで経営陣に影響力を及ぼせるポストとしてCFOを設置しました」