厳しい目を向けつつ、寄り添い、応援する
CFOはユーグレナのサステナブルではない取り組みには指摘をする。しかし、それは財務を見ている永田にとって利益相反となる場合もある。長期的には取り組むべきことが、短期的には財務にマイナスになるケースもあるからだ。
「企業はつい目先の利益を追いたくなるが、それは本当に会社にとって、社会にとってよいことなのか。CFOは厳しい目で見てくれます。経営における規律性を保つのは内的動機づけだけでは難しいので、CFO制度はある意味内部監査のような面ももっているといえます」(永田)
「ソーシャルネイティブなCFOがハブになり、何千人、何万人もの10代が常時接続しているような状態です。会社がサステナブルでないことや短期で株価を上げる施策などをすれば若者から意見が飛んでくる。一方で、昨年上場企業初のオンライン株主総会を開催しましたが、そういった取り組みを若者は力強く応援してくれる。上場企業や大企業は失敗が怖くて新しいことができないなか、そういうサポーターがいることは意義が大きい」(出雲)
就任後、3代目CFOとFutureサミットメンバーは、ユーグレナの事業を理解するため2018年に竣工したバイオ燃料製造実証プラントの見学へ。
経営陣にとって、CFOは会社を厳しい目でチェックしてくれるうえに、変化を後押ししてくれる存在でもあるようだ。先日、「国際子ども平和賞」を日本人で初めて受賞した川﨑レナについて、渡部はこう語る。
「これまで私はルールを作る側の人たちを手助けするほうが向いていると思っていました。しかし彼女のスピーチで、『そのそばに立つ』ことはできるのではないかと思い直しました。彼女は『私たちはあなた方と敵対したいわけではない。あなたたちと一緒に戦うためにいます』と呼びかけましたが、まさしくそれだ、と。
CFOの存在はユーグレナの取締役会に出て『あれができていない、これができていない』と言うためではありません。こうしたらできるんじゃないかと提案し、一緒にやってみるためにいるのではないかと考えています」(渡部)
変化の激しい時代に、敵対するのではなく、対話し、寄り添い、ともに考え行動するCFO。今後どのように会社を、そして社会を変えていくのか。
「私は、サステナブルな未来、また戦争に巻き込まれず、貧困でチャンスを奪われない、そんな社会が、未来がほしい。また、日本でCFOが100人になったり、10代の多くが何らかの企業プロジェクトに関わっていたりすることにも期待したい。ユーグレナのCFOも10代目ぐらいまで続いてほしくて、その頃には未来を考える経営が当たり前になると思います」「CFOは会社をよくするためではなく社会や日本を変えていく仕組みとしてつくりました。しかしまだCFOを実際に設置したところはほぼなく、社会にインパクトを与えられているとは言えない。他の会社にもどんどんまねしてもらいたい」(永田)
「海外の投資家もCFOにとても好意的でファンになってくれます。CFOは企業が変わり続け生き残る会社になるために有効な手段なのです」(出雲)
CFOの設置以来、ユーグレナにCFOについて詳しく聞きたいという問い合わせが多数あるという。会社経営の向かう先は未来を生きる若者のなかにあるのかもしれない。
使用済み食用油とユーグレナ由来油脂が原料のバイオ燃料「サステオ」はバスや船、飛行機に使用され始めている。