CFOの選考では同時にCFOとともに活動する「Futureサミットメンバー」という同じく18歳以下のメンバーの選考も行う。18歳未満は選挙権もない未成年だ。彼らを選ぶ際に何が重要視されたのか。
永田は開口一番に「ベストセラーの書名と同じ、『ファクトフルネス』です」と言う。
「社会によいこと、サステナブルといった分野はイメージ論で語られがち。それは企業を誤った方向に導きかねません。だから根拠やデータをきちんともち出して話せるかを重視しています」
出雲は「度胸をいちばんに見ます」と言う。「大人ともじもじせずにたくさん話せる、トーカティブな性質をもった若者に来てもらい議論をしたいからです」。2020年以降はコロナ禍による変化で時間と場所を合わせるのが難しかった高校生以下の若者ともオンラインでコミュニケーションを取れるようになった。実際に3代目CFO渡部はマレーシアからオンラインで選考に参加している。
2022年に就任した3代目CFOとFutureサミットメンバー。
CFOが会社をひっくり返す
渡部はCFOとして、現在どのような活動を行っているのだろうか。
「いまは社会的インパクトのある提言と、ユーグレナを通して起こす具体的なアクションを検討中です。メンバーはみな意識しているテーマが違うのでアイデアをまとめるのが難しく、オンラインミーティングなどでコミュニケーションを取りつつ3代目のチームとしての人格をつくっているところです」(渡部)
3代目CFOとFutureサミットメンバーによるキックオフミーティングの様子。
1代目CFOはペットボトル商品の全廃を提言し、2代目CFOはユーグレナを自分たちが働きたい会社にする、つまり働く人のサステナビリティの面で施策を提言していた。提言と施策をおよそ半年程度かけてまとめ、取締役会で7人の役員の前で内容をプレゼンするスケジュールだ。提案が甘く具体性や実現性に欠ける場合差し戻しもする。一方で、大人がCFOたち若者に驚かされることもある。
永田が話す。
「初代CFOの小澤杏子の代は、ペットボトル商品全廃について最初は社内で『そんなのは短期間では無理だ』との声が上がっていたのですが、CFOが言うならば、と実現に向け動き、提言を受けたその年の秋にペットボトル商品を全廃しました。2代目の川﨑レナは、就任して初めて会社に来たときに『日本には働きたい会社がない』と言いました。若者が働きたくなる企業は、現状の日本の企業ではありえない、と。私やユーグレナの仲間たちは良い会社をつくり、働いているという自負もあったため、衝撃を受けました」
ユーグレナの主力事業であるヘルスケアのメインブランド「からだにユーグレナ」。トロピカルフルーツオレ味の関連商品は、料理人の鳥羽周作が監修。
若者に応募をさせてあげている立場ではない。むしろ、「意見をもらい、厳しい目で見てもらっている」のだ。こうして、社内のCFOに対する意識が高まった。
永田のねらいはまさにこの点にあった。パーパスやビジョンが重要視されるようになった時代において、有言実行型の経営でなければ持続可能な組織にはならない。未来型組織にするために経営陣が本来もたない視点を「CxO」として置いたのである。
また、その変化を出雲はこう言う。「初代、2代目、3代目とCFOが代わるなかで、それぞれが違うベクトルのやりたいことがあるのが何よりの価値。社内もスピーディーに変化することに慣れ、CFOたちの提言を即実行する会社になった」