黒木氏によれば、かつてアフガニスタンで、イスラム主義勢力タリバンと対決していた民兵の間で、二の腕にメープル・リーフ(カエデの葉)の入れ墨をすることが流行していた。民兵と協力関係にあった米軍特殊部隊が不思議に思って尋ねると、「メープル・リーフは強さの象徴だ」という返事が返ってきた。当時、民兵たちも「テクニカル」を使っていたが、粗悪品が多かった。そのなかで、「メープル・リーフ」のマークがある「テクニカル」は、故障もなく非常に頑健な車体で高く評価されていたからだという。なぜ、「メープル・リーフ」マークだったのか。当時、トヨタの海外生産工場がカナダにあり、そこで生産された車体にはこのマークがつけられていたという。
ただ、日本がウクライナにピックアップ・トラックを支援することは容易ではない。政府の途上国援助(ODA)の指針となる「開発協力大綱」は、非軍事の分野に限って他国軍への支援を認めているからだ。また、日本政府は今年3月、防弾チョッキやヘルメットをウクライナに支援した。日本には、防衛装備移転三原則があるため、殺傷能力がある兵器を支援できない。支援では、開発途上にある国などに、自衛隊の装備品を譲与したり、安く譲渡したりできる自衛隊法116条の3を根拠にした。でも、そもそも自衛隊の中古品に限られるため、ピックアップ・トラックを提供することは難しいだろう。政府は来年の通常国会中に、開発協力大綱の改定を行い、ODAの例外扱いを認める方針で調整を始めているという。
日本は武器輸出がほとんどできないため、防衛産業にとって「お客様は自衛隊だけ」という状態が続いてきた。儲けにならないため、防衛分野から撤退する企業も後を絶たない。そんななか、ドローンといい、ピックアップ・トラックといい、「事実上の兵器」として活躍しているものもある。黒木氏は「デュアル・ユース(軍民両用製品)がこれだけ増えてしまっては、武器輸出だとしてすべてに規制をかけることはほぼ不可能に近い。根本的に新しい枠組みが必要なのではないか」と語った。
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