若者とテクノロジーのかかわりについて長年研究を行い、米カリフォルニア大学でコネクテッド・ラーニング・ラボを率いる伊藤瑞子准教授に、詳しく話を聞いた。
──文化人類学者として30年にわたり、日米で若者とデジタルメディアとのかかわりを研究されている。
アメリカでも日本でも、新しいテクノロジーを率先して利用するのは常に若者だ。従来彼らはみな同じようにデジタルメディアにかかわっていると考えられてきたが、アメリカで行われた大規模調査によっていくつかのアプローチに分類できることがわかった。
ひとつは我々が「インタレスト(関心)・ドリブン」と呼ぶかかわり方で、まずはじめに興味のある対象があり、それを共通言語としてコミュニケーションが発生するというもの。男の子によくみられた。
一方女の子に多くみられたのが「フレンドシップ(友情)・ドリブン」と呼ぶ使い方で、コミュニケーションのためにデジタルメディアを用いる。
従来はこのようなジェンダー差が存在したが、近年ではテクノロジー化が進んだことで個人が自分の嗜好(しこう)に沿った選択をしやすくなり、皆がよりインタレスト・ドリブンなかかわり方をできるようになってきた。
自分の興味を発端として社会とかかわり、学ぶことにはポジティブな面が多くある。例えば日本のアニメを見たいがために、日本語や翻訳、字幕、配信について学んだ学生など、自分が好きなことのために必要なことを、モチベーションをもって学び、それを通じて他者とつながることができる。
親は子どもがスマホやゲームに熱中するのを嫌がるが、子どもがスマホを見ているのは、スクリーンの向こうの人間とのかかわりに執着しているのであって、テクノロジーの後ろには社会があり、人がいるという、ポジティブな面を認めなければならない。
若者たちはいま、ほとんどのことをオンラインで学ぶことができる。学ぶ方法が大きく変わっており、私たちはそのようなデジタルを通じた社会とのかかわりを無視することはもはやできなくなっている。