自閉症にフレンドリーな職場環境
ウニカスでは、自閉症にフレンドリーな職場環境を推進する。光に敏感な人には、窓に遮光したり、視覚が敏感な人には、壁際の席を用意したり、聴覚が敏感な人には入り口やコーヒー・マシンの近くの席は避ける。人によって異なるので、カスタマイズだ。
また、職場仲間でのランチは苦手な人が多いので、そこもクライアントには含んでおく。コロナ禍により、家からリモートワークできるケースも増え、かなりの環境改善につながった、という。
ウニカスのITコンサルタントのバックグラウンドはさまざまだ。必ずしもITの知識や経験が必要ではなく、数学や物理で博士号をもっている人もいれば、大学に行ったがドロップアウトした人、ビジネスのバックグラウンドをもつ人などがいる。
「その多くは、友人関係の構築に失敗したり、鬱など、人生の危機を体験しています。数年、場合によっては10年ほど職場から離れている人も多い。そういった人たちに、我々のところに来てもらって、もう一度自信を取り戻してもらうのです」とシェレロッドは語る。
そのひとりのボード・フレドリクソンは、2011年にウニカスに入社。11年のキャリアをもつITコンサルタントだ。
イギリスの大学でゲームデザインを学んでいたが、暴行事件に遭い、中退せざるをえなかった。地元企業のWebデザインの仕事や、車いすや歩行器を組み立てる会社などで働いたのち、ノルウェー福祉労働局が運営する就職支援のソーシャル・サービスに在籍していた際、ウニカスについて知り、応募した。現在はノルウェー警察の入国管理システムのテストを行っている。
「国にとって非常に重要なことにかかわれるのは、楽しいです」とフレドリクソン。「私は詳細志向なので、より大きなタイムスケールでささいなことを見つけ、長期的にプロジェクトに利益をもたらす近道を見つけだすことができます」。
その強みは、ウニカスに来て初めて知ることができたという。シェレロッドによると、当初はコミュニケーションに課題があったフレドリクソンだが、それを克服し、いまはクライアントから引っ張りだこの有能コンサルタントだ。
シェレロッドは、ASDの人の主な特徴として、うそがつけない、正直者であることを挙げる。「異なる見方が、組織に利点をもたらすことも多い」。
彼は言う。「創業からコアの考え方は変わっていない。社会的に意義のあることをすると同時に、ASDの人々のポジティブな面を活用する。我々はASDの能力は市場で競争力をもつと見る。何かに秀でているならばその能力を発揮して、ほかのサービスと交換されなくてはならない」
ラース・ヨハンソン=シェレロッド(右)◎いくつかの金融機関を経て、2009年にUnicusを創業。スウェーデン、オランダのほか、ポーランド・オフィスも年内に開設予定。「業界のグローバル・リーダーを目指したい」
ボード・フレドリクソン(左)◎11年のキャリアをもつUnicusのITコンサルタント。日本の漫画、アニメファンで、日本語が堪能。最近はホロライブのVTuberにはまる。「推しは、角巻わためです」