ニコレッティは、「ファッションは人を楽しませなくてはならない」と指摘する。「世界をより良い場所にするための素晴らしい戦略的ツールになり得るファッションは、気分を高揚させる、美しい芸術作品であるべき」だという。
そして、ケリングの責任者を含め、関わってきた人たちの「感覚が鈍かった」ことは、「速やかに、適切に対応することが求められる、必要な非常に重大な罪」だとしている。
さらに、これは「企業の危機管理広報(クライシスコミュニケーション)における最悪の例の一つとして、語り継がれることになる」との見方も示している。
ブランドが学ぶべきこととは
企業にビジネスの意義を生み出すためのアドバイスを提供する英ミーニング・グローバルの創業者、マーティナ・オルバートは、バレンシアガのこの一件から得られる重要な教訓として、次の2つを挙げている。
一つは、特に高級ブランドの場合、ブランドとしての評判や認識は“もろい”ものだということだ。文化的な面に関する失敗が、いかに危険なものになり得るかがわかるという。
もう一つは、持ち株会社であるケリングとそのポートフォリオに含まれるブランドのひとつであるバレンシアガが、いかに深く関連づけられ、認識されているかということだ。
オルバートは現在の高級品業界におけるキーワードは、「責任と持続可能性」だとして、「高級は持続可能性と同一」であり、「個々のブランドの戦略はいずれも、それを反映したものでなくてはならない」としたケリングのフランソワ・アンリ・ピノーCEOの発言を挙げている。
ピノーCEOは、「高級ブランドと親会社は、一つにまとまった文化的価値のエコシステムとして、全体的に管理される必要がある。そうでなければ、持続可能性に関する戦略全体が、意味をなさなくなる」と述べている。
──だが、どうしたことかケリングは、その貴重なレガシーブランドの一つを守るための、適切な支援をしていない。これは、意図的に行われていることなのだろうか。
(forbes.com 原文)