さらに奇妙なことは、「話を聞き、学びたい」としていたバレンシアガとヴァザリアがどちらも、インスタグラムのアカウントへのコメントに制限をかけたことだ。そして、何より奇妙なのは、ケリングがバレンシアガを助けることなく、炎上させておいたことだ。
ブランド戦略アドバイザーのスザンナ・ニコレッティ(バレンシアガとは無関係)はこうした問題の原因は、高級ブランドの企業文化においてクリエイターたちが高く評価され、その活動が実質的に管理・監督されていないことにあると考えている。
「高級ブランドのクリエイティブ・ディレクターたちは、“象牙の塔”に住んでいるようなものです。そこで、現実世界からはまったくかけ離れた、彼ら自身の世界観を作り上げているのです」
これは、スイスで暮らし、パリにあるバレンシアガのオフィスには月に一度しか姿を見せないとされるヴァザリアにも当てはまることだという。
「内部統制を強化する必要があります。クリエイティブ・ディレクターたちはチームの一員であり、ブランドの価値観を反映する存在でなくてはなりません。彼らは、管理される必要があるのです」
ニコレッティは、クリエイターたちが表現において挑発的あることの価値について、議論するつもりはないという。だが、企業の経営者は、彼らの挑発があまりにも過激で無神経、そして悪趣味なものにならないよう“ガードレールを設置”する必要はあるとしている。
カーダシアンが「バレンシアガ」と書かれたバリケードテープのような黄色のテープを全身に巻き付け、ボディスーツを着用したような姿を披露したことや、昨年の「メットガラで」着用した頭からつま先まで全身を黒いマスクとガウンで覆った姿にも、ニコレッティは疑問を投げかけている。
バレンシアガはテディベアの広告以前から、「心をかき乱すような表現が多かった」として、「まるで世界滅亡後かのように、バレンシアガはネガティブで暗かった」と述べている。