失業率は3.7%で横ばい
2022年11月の米国失業率は、前月に続いて3.7%と横ばいだった。9月の3.5%からは微増となったが、2022年3月以降は、3.5%から3.7%という狭い範囲内で推移している。
失業率は、もう下がらないようだが、かといって上昇しているわけでもない。米労働省労働統計局のグラフを見てもわかるとおり、米国の失業率は、ここ数年来の最低水準あたりを推移している。
景気後退のリスク
それとは対照的に、他のいくつかの有力な指標は、不況の到来を示唆している。米住宅市場は急落しているようだ。イールドカーブ(利回り曲線)は、深く右下がりの曲線を描いている。株式と債券は、インフレと経済成長率低下への懸念から、低迷する2022年となった。経済活動を予見する先行指標の多くも、マイナス傾向を示している。
しかし、労働市場の低迷を伴わない景気後退は、米国では異例だ。たとえば、経済学者クラウディア・サームは、失業率の3カ月平均が、12カ月の最低値と比べて0.5%高くなるだけでも、景気後退の前兆としては十分であることを明らかにした。
まだそこまで至っていないとはいえ、歴史を指針とするならば、失業率がほんの数カ月でそのくらい上昇することはありうることだ。つまり、現在の失業率が低いといっても、2023年に入って急変する可能性はある。
それでも、労働市場はいまのところ、近い将来、景気が後退する高いリスクを示唆していない、数少ない指標のひとつだ。
FRBにとっては難題
労働市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)にとって難題だ。FRBとしては、インフレ率を下げたいと考えている。しかし、インフレ率の上昇が止まったとはいえ、急激に低下しているわけでもない。
FRBに言わせれば、問題のひとつは、労働市場の逼迫による賃金インフレだ。米アトランタ連邦準備銀行は現時点で、賃金伸び率は前年比で6%前後になると推定している。そして、賃金の伸びがおそらくサービス価格のインフレを助長している、とFRBは考えている。
FRBは、政策金利がピークに近づきつつあり、おそらく2023年はじめにはピークになると示唆している。とはいえ、労働市場の逼迫が緩和しなければ、FRBはインフレ率を目標の2%に戻しにくくなるかもしれない。また、金利を高水準のまま維持する可能性もある。
思わぬ結果を招きかねないので、何を願うかについては慎重であるべきだが、労働市場の逼迫が多少なりとも緩和すれば、FRBが最終的に金利引き下げを容認することはありうるだろう。現状がまだその段階にないことは確実だ。
米国では2023年に景気が後退するという見方はコンセンサスになりつつある。しかし、労働市場は依然として持ちこたえている。失業率の上昇を伴わずに景気が後退するとしたら、驚くべきことであり、異例だ。
米国が2023年に不況に見舞われる可能性は大いにある。しかし、労働市場を見る限り、いますぐそうなるわけではなさそうだ。
(forbes.com 原文)