キャリア・教育

2022.12.09 15:50

「やりたいことに真っ直ぐに」サーカスからWEB3へ

五十川舞香 | Webacy 創業者兼CEO

米サンフランシスコを拠点に、Web3のリスク管理サービスを提供するWebacy のCEO、五十川舞香は異色の経歴の持ち主だ。米国人の母親と日本人の父親のもと、日米を行き来して育った五十川は、高校を卒業後、スタンフォード大学に入学した。

しかし、その3カ月後に世界的なサーカス劇団シルク・ド・ソレイユからのオファーが届く。12歳からトレーニングをしてきたアクロバットの先生が紹介してくれたのだ。千載一遇のチャンスを逃したくないと、大学を2年休学。多くの仲間と世界中を興行し、夢のように楽しい時間を過ごした。

大学に戻ると、AIとテクノロジーを専攻。2社のスタートアップでインターンシップをし、卒業後はマイクロソフトに就職した。しかし、たった1年で退社。「シルクでパフォーマンスを披露していた時に比べて、大企業では自分のインパクトがあまりに小さい。自分の声は聞かれないし、色々やりたくても、ルールがありすぎてできなかったんです」

21年にWebacyを共同創業。Webacyはデジタル資産の安全性を高めるWeb3サービス。死後のデジタル資産やSNSアカウントの管理支援を目的に始まったが、いまではハッキングや詐欺など、死以外にも予期しない緊急時に対応。ブロックチェーンのスマートコントラクトを使い、ワンクリックで全資産の移動や、データの永続的保管などが可能になる。

五十川は、世界各地から集めたエンジニアら7人の男性メンバーを率いるCEOだが、女性が珍しい業界ゆえにチームメンバーがCEOだと思われるなど、モヤモヤすることも多い。その度に、劇団での体験を思い出し、自分の努力できる力を信じ、自信を取り戻す。

「自信をもつのは簡単ではないけれど、自分を信じて前に進むしかない。私は自分のやりたいことに対しては真っすぐに生きてきた。嫌いな仕事を毎日していたら人生も嫌になってしまう。だから、やりたい仕事をして自分の前進を日々実感したい。そうすれば毎日が楽しく過ごせると思うんです」


五十川舞香◎1996年生まれ。米国と日本を拠点に育つ。スタンフォード大学卒。シルク・ドゥ・ソレイユの劇団員として世界で興行。卒業後はマイクロソフトに入社。21年Webacyを共同創業。22年の米フォーブス30 UNDER 30選出。

文=成相通子 写真=キャロリン・フォン スタイリング=レイチェル・カブラ ヘアメイク=リンゼイ・ダバロス

この記事は 「Forbes JAPAN No.099 2022年11月号(2022/9/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事