1999年に米ステルス戦闘機を撃墜したミサイルが今もウクライナ防衛で活躍

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1999年3月27日、セルビア軍の地対空ミサイルS-125がセルビアの首都ベオグラード郊外で米空軍のステルス戦闘機F-117を撃墜した。それから23年、ステルスキラーのS-125は現在もウクライナで使われている。

ネット上でここ数週間出回っている写真には、ポーランドが所有していた少なくとも1基のS-125システムが同国からウクライナに運ばれる様子が写っている。ウクライナ空軍はロシアの戦闘機やミサイルを撃墜するために、間違いなくこのシステムを配備しようと計画している。

ポーランドが所有していたS-125は、すでにウクライナで使用されている旧ソ連のS-125に加わる。ポーランドの地対空ミサイルは、2月にロシアがウクライナとの戦争を拡大させて以来、米国、ドイツ、スペイン、フランスなどの国々がウクライナに提供を約束した多くの防空システムの1つだ。

その目的はウクライナが国内の都市や発電所の周辺にミサイルや銃の壁を構築するのを支援し、容赦ないロシア軍の空襲の影響を抑制することだ。

S-125は新しい兵器ではない。ソ連の防空部隊が1960年に初めてこの重量900キロ強のミサイルと付随のレーダーや支援機器をモスクワ周辺に配備した。

その後の60年間で着実にS-125の弾頭、信管、レーダーの改良が重ねられ、世界で最も恐ろしく、かつ耐久性のある防空システムの1つであることが証明されている。

1970年から1973年にかけて、エジプトのS-125はイスラエルのジェット機を12機ほど撃ち落とした。1991年にはイラクのS-125が米空軍のF-16戦闘機を撃墜。直近ではシリアのS-125が米国のドローンと交戦した。

S-125の秀逸さはレーダーを使った誘導が簡単であることと、そして約68キロある弾頭の爆発力にある。

このシステムの有効性を高めるのが賢い戦術だ。ゾルタン・ダニ大佐が率いたセルビア軍のミサイル部隊は、戦闘機F-117を撃墜するために米軍機の飛行経路を予測した。そして通常の戦術に反して、米軍機の位置を確認するために高周波レーダーの電源を1回につき20秒入れ、これを数回行った。

ポーランドから供与されたものも含め、ウクライナ軍がS-125を興味深い新たな方法で使用することが予想される。ウクライナ軍は防空システムの多くに「Kropyva」というマッピングソフトを追加している。ポーランドからのS-125に同じソフトが搭載されても驚きではない。

Kropyvaは、友軍の位置情報を示す米国の「Blue Force Tracker(BFT)」システムのブートストラップ版だ。BFTと同様、Kropyvaはデジタルマップを表示する。その地図で敵と味方の部隊の位置が見て取れる。戦略ゲームのようなものだが、恐ろしくリアルだ。

Kropyvaの設計には工夫が凝らされている。あらゆるAndroidタブレットで動作し、ウクライナ全軍のユーザーがつながり、情報提供と情報取得の機能で1つのネットワークを構築している。ユーザーによる敵軍の拠点や戦車、航空機の位置入力が可能だ。

また、ユーザーは重複している多くの情報源から得られた情報を組み合わせた、包括的でトップダウンの戦場ビューを閲覧できる。Kropyvaはウクライナ軍のS-125を扱う砲兵に敵機の接近を知らせることができ、S-125の砲兵はレーダーをオンにする必要がない。ミサイルを発射するときにレーダーの電源を入れる。

S-125は古い兵器だ。だが50年もの間、西側諸国の優れた戦闘機を撃墜してきた。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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